7月14日に初めて発表された「タイムシフト視聴率」(録画再生率)への反応がかまびすしい。かつてタイムシフト視聴率は「絶対に表に出せない数字」とされてきた。リサーチ評論家の藤平芳紀氏がいう。
「録画再生ではCM飛ばしをされやすいため、局にとってもスポンサーにとってもこの測定は“パンドラの箱”といわれてきた。しかし多メディア・多チャンネル化により、視聴率が低下傾向にある放送局にとって、録画・再生の測定は不可欠になってきた。あえてテレビ局がこの“箱”を開けたのは、よほどの覚悟があってのことだろう」
テレビ業界は「録画も合わせればウチのコンテンツは多くの人に観られている」とアピールする方向へ舵を切ったのだ。
某民放のプロデューサーは、初回視聴率26.5%と絶好のスタートを切った木村拓哉主演『HERO』(フジテレビ系)は、まさにタイムシフト視聴時代を狙った番組だと指摘する。
「かつての大ヒット番組の続編は、期待値の高さから高い確率で録画再生が期待できる。第2回放送は20%を切ってしまったが、第1回はタイムシフト視聴率を合わせれば50%近い数字もあり得る。ドラマ終了後にその数字が発表されれば、第3シリーズや映画化、DVD化に弾みがつき、まさに美味しいことだらけ。
ただしこの流れは、『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)のように重厚な作りのドラマがドンドン出てくるならいいが、安易なリバイバル路線が繰り返される危険性も孕んでいる」
テレビ視聴の実態を知るための調査が、かえってテレビをつまらなくする可能性があるという指摘だ。
※週刊ポスト2014年8月8日号