この秋にも消費税率の10%への引き上げが判断されるが、日経新聞は、7月17日付の紙面で、政府の「経済財政に関する中長期試算」の最新データをもとに、〈財政収支、11兆円赤字 20年度政府試算〉という見出しで〈消費増税で赤字を穴埋めする場合、税率を10%へ上げた後に、さらに4%程度の引き上げが必要になる計算だ〉と報じた。
わずか3年前、野田政権が消費税10%を打ち出した時、大新聞はこぞって増税が必要と書き立てた。テレビでも解説者やコメンテーターが増税必要論の大合唱となった。本誌は景気への悪影響や、実際には増税分が政治家と官僚の利権拡大に使われることなどを理由に反対したが、週刊誌のなかにさえ賛成論は多かった。
そのマスコミを手玉に取った仕掛け人の香川俊介・前主計局長がトップの事務次官に就任した。当時、官房長として消費税10%引き上げの政界・マスコミへのローラー作戦の陣頭指揮をとった人物である。
さらにナンバー2の主計局長には田中一穂氏が就任。香川氏と同期入省の田中氏は第一次安倍政権で首相秘書官を務め、安倍氏に近いといわれるだけでなく、野田政権下では主税局長として増税路線を牽引してきた。
しかもその頃(2010年)、財務省を退官したばかりの丹呉泰健(たんご・やすたけ)元次官が読売新聞グループ本社の監査役に天下りするという信じ難いことまであった。
いま、あの時を焼き直したかのような工作が始まっている。
今年6月、読売の東京本社監査役には「財務省の天皇」とも呼ばれた勝栄二郎・元次官が就任した。もはや財務省の天下り指定席のようだ。その直後、読売は〈消費税率の引き上げから3か月が過ぎて駆け込み需要の反動減が和らぎ、景気回復の見方が強まっている〉(7月18日付)と報じた。
「メディア対策は大新聞からというのが鉄則。そうすれば系列テレビのキー局も動く。まずは財研(財務省記者クラブ)の経済部記者たちに税率10%ではプライマリーバランスは赤字で、財政再建はできないというレクチャーをしている」(前出の財務省中堅)
そんなタイミングで飛び出したのが、日経の「税率14%」報道だったのだ。記者にどのようなレクチャーが行なわれたのかは想像に難くない。
※週刊ポスト2014年8月8日号