ろくでなし子氏(42)が「わいせつ電磁的記録頒布」で逮捕された事件。女性器をかたどったカヤック「マンボート」の制作資金を拠出してくれた出資者に女性器の3DデータをダウンロードできるURLをメールで送付したことが罪にあたるとされた。
本誌でも過去に作品を紹介した英国人アーティスト、ジェイミー・マッカートニー氏も今回の騒動に疑問を抱く一人だ。
マッカートニー氏は2012年にロンドンで世界20か国・571人の女性器の石膏型を壁一面に並べた「The Wall of Vagina」(女性器の偉大なる壁)の展覧会を開催し、来場者殺到で会期を延長するほど好評を博した。今回の逮捕劇は彼にとっても「ショックだった」が「驚きはない」とも語る。
「彼女の作品は、ポルノではなくアートです。しかし、彼女の作品は権力に対して故意に挑発的なので、逮捕の可能性は常にありました。日本のわいせつに関する法はとても厳しく、同時に、とても分かりにくい。境界線上で挑戦的な作品を作っている場合は常に危険があるのです」
今回の事件を機に、彼女との共同制作を考えているというマッカートニー氏はこうエールを送る。
「警察はあなたを逮捕できるが、アイデアを監獄に入れることはできません。あなたが次に何を作るのか、私はとても楽しみにしています」
海外ではアーティストとしての彼女に敬意が払われる一方で、日本の新聞・テレビは逮捕時、警察発表そのままに彼女を「自称芸術家」と、わざとその人格を貶める表現で報じた。これについては劇作家の鴻上尚史氏が生放送の情報番組で「(マスコミ報道は)恥ずかしいこと」と批判し、ネット上でも堀江貴文氏や茂木健一郎氏らからも異論が噴出した。
釈放後の記者会見でも、ろくでなし子氏は「私は信念を持って活動してきた芸術家です」と報道を批判し、弁護人である山口貴士弁護士は「自称と付けているところに(警察の)意図を感じます」と反論した。
※週刊ポスト2014年8月8日号