「平和の大切さを世界に発信したい」との訴えからユネスコの記憶遺産候補に申請していた「知覧からの手紙 知覧特攻遺書」(申請・鹿児島県南九州市)。
「日本の視点のみ」という評価から、登録は叶わなかったが、その背景に“日本の戦意高揚を危惧した”中国の横槍が入った感は否めない。
今年2月、中国外交部の華春瑩報道官が、この申請に対して、「日本軍国主義の侵略の歴史を美化するものであり、実質的に世界の反ファシズム戦争の成果と第二次大戦後の国際秩序に挑戦状をたたきつけるものだ」と牽制したことは記憶に新しい。
知覧の「特攻隊平和会館」には、約1万4000点の資料が収蔵されており、中でも特攻を言い渡された隊員たちが綴った遺書や絶筆は、来訪したものの心を揺さぶる力も持っている。とは言え、今回市が申請のために選定した資料333点は、婚約者や母親に宛てた手紙や日記、わが子に宛てた手紙など、ファシズムとは無縁のものばかり。むしろ、戦争の愚かさを訴えるに値する資料ばかりなのだが、中国にはそう写らなかったようだ。
「中国は日本のことを怖がっているんじゃないですか。申請した以外の展示品や資料の中には、日本人の凄みを感じるものもたくさんある。こういう人たちがいて、今の私たちの暮らしがあるんだ、と多くの方が痛感します。登録されれば、よりたくさんの人が来館する。その結果、日本人のナショナリズムが向上することを恐れているんでしょう」(地元民)
たしかに、死に向かう直前の隊員、しかもそのほとんどが20歳前後という彼らのメッセージを見ていると、純粋に目頭が熱くなる。戦意高揚云々ではなく、心を揺さぶられる貴重な資料なだけに、ファシズムと斬り捨てる中国の横暴な態度には腹が立つというものだ。
しかも、あろうことか中国は、南京事件と慰安婦問題を記憶遺産に申請するという厚顔無恥さ。今なお、南京事件の真偽がクリアになっていないにもかかわらず、である。人の申請には文句を言い、自分たちは嘘でもいいから申請を通そうとする。「国威高揚のために記憶遺産を利用しているのはあなたたちでしょう?」と、見事なまでのブーメラン。
「こんな馬鹿げた国を相手にする必要などない」。
あたかも、知覧から飛び立った先代の有志たちが、そう言っているように聞こえるのは気のせいか。こういう時代だからこそ、今、我々が何をするべきかを考える意味も含め、ぜひ平和会館に足を運んでみてはいかがだろうか。