「相続税はお金持ちだけの話だ」──あと半年で、その常識が大きく変わる。2015年1月に施行される相続税増税のポイントは、「対象になる人が大幅に増える」ことだ。
政府は「課税対象者は全国で4%から6%程度になる」としているが、現実にはそんなものでは済まない。首都圏(東京国税局管内)の申告対象者は改正前の2倍以上となる44.5%、さらに東京に限れば50.3%となる。実に2人に1人が申告対象となるのだ。首都圏以外でも地価が高い大阪、名古屋や政令指定都市などでは多くの人が新たに申告対象となる。
最大の理由は、今回の増税で「基礎控除額」が大幅に減額されることにある。妻と子供2人が相続する場合、これまでは相続財産が「8000万円」以下なら課税されなかった。その基礎控除が40%カットされ、「4800万円」となったのだ。相続財産の多くは土地や家屋などの不動産。都市部で不動産を持っていれば、預貯金などが少なくても基礎控除を超えるケースが多くなってしまうのである。
その結果、これまでは納税額ゼロだった人(財産総額5000万、7500万円)でも納税の必要が出てくる。財産総額1億円以上になると納税額は改正前の3倍以上の315万円にもなる。都市部に一定以上の土地を持っていれば、誰もが増税対象になりうるのだ。
7月1日には相続税の不動産価値を算定する基準となる路線価が発表され、首都圏を中心に軒並み大幅アップした。給料は上がらず物価ばかり上昇させるアベノミクスは、相続でも大きな痛手となりそうだ。
※週刊ポスト2014年8月8日号