安倍晋三首相は9月第1週に内閣改造と自民党役員人事を行なうと見られている。今回の改造は“定期人事異動”ではない。首相や主流派(親安倍派)にとっては「10年政権」を実現するための盤石の基礎作りの意味を持つ。
その一方で、反主流派(反安倍派)は支持率低下の首相の足元を見て、自派閥の大臣ポストの拡大を強く要求。現在、自民党には60人以上の「入閣待望組」がいる。
ポスト配分次第では党内の不満が一気に高まって反安倍勢力が増え、政権を揺るがす事態になりかねない。大臣を取るか、取られるか──。「真夏のイス取りゲーム」が始まった。
安倍首相が最初に仕掛けたのが「幹事長」交代だ。最大のライバルである石破茂幹事長に集団的自衛権行使の関連法案を担当する「安全保障法制担当相」への就任を打診した。与党ナンバー2の幹事長の座から外して力を削ごうという狙いが透けて見える。
石破氏は入閣の打診が来ることを事前に予想し、「集団的自衛権問題で国会答弁できる人材はそうはいない。入閣要請があれば断わるのは難しい」と周辺に漏らしていた。
だが、「無派閥連絡会(通称、石破グループ)」内には、
「閣内に封じ込めて来年の総裁選に出馬できないようにする意図がミエミエだ。絶対に受けるべきではない。どうしても幹事長を代えるというなら、野に下って総裁選準備をすべき」
と反発する声が強い。石破氏が入閣を受けた場合、失望してグループからの脱会者が相次ぎかねず、そうなれば将来の総理・総裁の目は消える。石破氏にとっては難しい決断だろう。
後任の幹事長人事も注目される。本誌は安倍首相が電撃訪朝で支持率を挽回し、菅義偉官房長官を幹事長に据えて「10月解散」を打つ構想を練っていることを報じた(7月18日号)。そうなれば後任の官房長官には首相側近の加藤勝信副長官が昇格するという見方が強い。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号