大きな騒動となっている中国の“毒食品”問題だが、これと共に懸念されるのは、鉱山開発や工場汚水などの複合的な環境汚染が中国国内で拡大していることだ。
例えば、広東省のある農村の農地からは基準値の44倍の鉛、12倍のカドミウムが検出され、1980年以降にがんや皮膚病など河川の汚染が原因とされる病気で約300人の村民が命を落とした。「がん村」と呼ばれるこうした農村は中国に少なくとも約250か所あるとされる。
しかし、当局は積極的に被害を調査する姿勢を見せない。どれほどの健康被害が生じているのか誰にもわからないところが、中国の本当に恐ろしい点だ。北京大学に留学経験のあるジャーナリストの富坂聰さんはこう説明する。
「当局は毒食品や環境汚染が市民に与える健康被害の調査に消極的です。経済成長を優先する中国のホンネは、企業が倒産したり失業者が増えたりすることを抑えたい、ということ。下手に一般市民の健康被害を認めると、食品会社や企業が訴えられて賠償問題になりかねません。実際に被害者が出ても、公にせず秘密裏に処理している可能性があります」
食品をめぐる中国の闇は暗く深い。しかし、ここから日本が学ぶべきこともある。中国の食問題に詳しいジャーナリストの椎名玲さんは、こう話す。
「今回の問題で中国人と日本人の食に対するモラルが全く異なることがわかりました。安い食品にはそれなりの理由があります。日本の消費者は、かつては誰もが持っていた『安かろう悪かろう』という見識を今一度、心すべきです。人間が口にする食べ物は、健全な餌や水や空気がないと安全に育ちません。どんな環境で育てられたかわからない食品について、私たちは細心の注意を払うべきです」(椎名さん)
※女性セブン2014年8月14日号