「政界のゴッドマザー」と呼ばれる安倍晋三首相の母、安倍洋子さん(86歳)が、8月18日からモンゴルを訪問する予定だ。しかも、その翌日から拉致議連事務局長の山谷えり子・自民党北朝鮮拉致問題対策本部長らもモンゴル入りするという。
8月20日からウランバートルで日蒙文化交流40周年事業として友好書道展が開かれ、山谷氏など拉致議連メンバーや洋子さんの書も出展されるというのが訪問の表向きの目的だ。
だが、モンゴルはこれまで何度も日朝の秘密接触の舞台になってきた。今年3月にはエルベグドルジ大統領の仲介で横田滋・早紀江夫妻とめぐみさんの娘キム・ウンギョンさんやひ孫との面会がウランバートルで実現したことは記憶に新しい。本誌は日朝外交筋の間で、興味深い情報が流れていることを掴んだ。
「洋子さんは横田夫妻がしたためた手紙を託されることになる。そして、現地で北朝鮮の政府関係者と面会して手渡す。安倍官邸主導の案件だ」──というのである。
官邸の極秘の仕切りなので関係者に流れる情報もごく少なく、手紙の目的も中身も不明だという。
手紙の宛先として考えられているのは、まずはウンギョンさんだ。だが一度面会しているのだから、わざわざ洋子さんがモンゴルまで運ばなくても北朝鮮との外交ルートで手紙を渡すことは可能だろう。洋子さんに託さなければならない理由は乏しい。そこで有力視されている宛先が「横田めぐみさん」なのだ。
「“安倍総理の母”といえば北朝鮮側にも十分な重みがある。何らかの理由で帰国できないでいるめぐみさんに対し、横田夫妻が思いを綴った手紙を必ず手渡してほしいと洋子さんがいえば、北朝鮮サイドも無視はできないだろう」(官邸筋)
官邸内で「洋子さんに横田夫妻の手紙を託す」という手立てが考えられているならば、7月に来日したエルベグドルジ大統領から安倍首相に直接もたらされた「重大な情報」が、めぐみさんの生存にかかわる具体的な何かだった可能性が高い。拉致議連幹部はこうも話す。
「総理の母が出向くのだから、手紙を手渡すだけが目的かどうかもわからない。めぐみさん本人ではなくても、拉致被害者かその関係者との対面が用意されている可能性はある。
だが裏では、北朝鮮が安倍首相を交渉のテーブルから離さないために、モンゴル政府を巻き込んで期待を持たせ続けようとしているだけかもしれない。警戒する必要がある」
洋子さんのモンゴル訪問や当地での活動について安倍晋三事務所に尋ねたところ、「担当者不在」を理由に本稿締め切りまでに回答はなかった。
果たして洋子さんは安倍首相にとって「究極の密使」となるのか。それとも北朝鮮から“飛んで火に入る夏の虫”と利用される「親バカ外交」に終わるのだろうか。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号