2020年の東京オリンピック開催を追い風に、東京の交通インフラ計画が続々と動き出し、民間の開発プロジェクトも加速し始めた。
オリンピック施設の集中する湾岸部では、晴海と銀座を専用レーンで結ぶ高速バス(BRT)の導入、新交通ゆりかもめや地下鉄8号線(有楽町線)の延伸などが構想・計画されており、湾岸部への交通手段が大幅に向上する。また、晴海・豊洲ではマンション建設が続き、選手村として建てられた施設は、大会後に総戸数4000~5000戸のマンションに転用され、湾岸部は巨大住宅地に変貌。
一方、都心部では休眠状態だった「都心直結線」構想が再始動した。押上~泉岳寺間の地下40メートルにバイパスを建造し、成田・羽田両空港を1時間弱で結び、丸の内に「新東京駅」が設置される計画だ。
大手町では「新東京駅」構想の実現を控え、外国人客などを見込んだ高級ホテル戦争が過熱する。世界19か国に超高級ホテルを展開する「アマンリゾーツ」が今秋開業のほか、地下1500メートルからの温泉掘削に成功した高級旅館「星のや 東京」が2016年に誕生。既存のホテルにはない魅力で勝負する。また、オフィス街の大手町から徒歩圏内の銀座・日本橋地区では松坂屋、サッポロ銀座ビル、ミキモト本店など、おなじみの老舗の建て替えが続々予定される。
そのほかの繁華街も活性化に向けてプロジェクトを始動。ヒルズやミッドタウンの建設で成功を収めた六本木では旧IBMと六本木プリンス跡地でオフィス・住居・商業棟からなる大型再開発が始まり、「第2六本木ヒルズ」計画も浮上している。
新幹線や高速道路といった都市基盤を一から築いた1964年大会では、開催決定から開催年までに実質GDP成長率が3度も前年比10%を超え、高成長を記録。経済が成熟した今の日本が同じような急成長を遂げるとは考えにくいが、シドニー五輪開催のオーストラリアのように、魅力的な都市づくりを成功させ、開催後も長期にわたって観光客を増大させた例もある。
大震災からの復興を進める日本列島。代表選手の活躍と同時に、力強い日本経済の跳躍を全国民が願っている──。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号