中国の覇権主義が東アジアの安全保障を脅かしている。対外的には東に南に海洋進出を進め、国内では少数民族の虐殺を繰り返し、民主化運動を弾圧する。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は「習近平体制下で、それらの侵略・弾圧は加速した」と指摘する。“猛毒”を吐き散らす無法な隣国にどう立ち向かうべきか、櫻井氏が提言する。
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本当に懲りない人々です。中国・上海の食品加工会社が期限切れの腐った鶏肉を使ってチキンナゲットを生産し日本に出荷していたことが判明して、大騒ぎとなっています。
中国食品の問題は、かつての毒入りギョーザなど幾度も事件が起きましたが、改善の兆しさえ見られません。
私自身、北京のホテルに宿泊する時には、朝食でねじり揚げパンを好んで食べていましたが、その生地に洗剤が混入していることがニュースになりました。洗剤を加えると揚げた時によく膨らんで色が白くなり美味しそうに見えるというのです。そのニュースを聞いて以来、中国取材の時は、なるべく食べないようにしています。
日本人には考えられない非常識な食品汚染を山ほどやってのけるのはなぜか。一連の食品問題を理解するには、中国人と中国文化の根底にある価値観を見なければなりません。
それは、「人を蹴落としても儲かればいい」「他人がどうなろうと自分さえよければいい」という価値観です。
そうした自己中心の考え方が深刻な水質汚染や、日本にも悪影響を及ぼしているPM2.5を初めとする大気汚染を作り出しています。先進国では工場に排気や排水の浄化装置を付けるのは常識ですが、そうするとコストがかかってしまうため「つけなくていい」「環境汚染など知ったことではない」という決断をしてしまうのです。
中国の知人がよくいうことは、「他人を押し退けなければ生きていけない。人に優しくしたり相手のことを慮ったりすることは自らの破滅につながってしまう。社会がそうさせるのです」という社会の厳しさです。
そのような価値観は中国の歴史から生まれていると思います。習近平主席は中国5000年の歴史といいますが、中国の国土は様々な民族が入れ替わり立ち替わり侵入して王朝を立て、そのたびに前の王朝を否定して殺戮を繰り返してきた土地です。他者を蹴落として自分が生き残るというのが中国の歴史にある構図ではないでしょうか。
中国はまだ先進国ではないのです。国際社会、自由主義社会の常識が通用しません。中国の根底にある自己中心の考え方を念頭に置いてみると、多くの問題の本質が見えてきます。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号