「中国ビジネス界の風雲児」と呼ばれる電子商取引最大手、アリババの総帥、馬雲(ジャック・マー)会長は今後数か月以内にニューヨーク株式市場で上場を果たすとみられるが、ビジネス躍進の陰には習近平国家主席や江沢民・元主席ら中国共産党最高指導部の親族など太子党(高級幹部子弟)の存在があったことが分かった。
すでに党政治局常務委員の親族20人以上が同社の株式に投資しており、上場すれば、少なくとも数億ドルの利益となるという。米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。
アリババはもともと、馬氏の生まれ故郷の中国浙江省に拠点を置くベンチャー企業だったが、事業拡大のきっかけを作ったのは習近平・国家主席だ。習氏が2002年、浙江省長として赴任した際、馬氏を見出したのが習氏で、2007年に上海市党委書記に転出する際、馬氏の上海進出を積極的に支援し、その後、習氏が政治局常務委員として中央に移るや、馬氏もビジネスを拡大している。
馬氏は習氏のルートから江沢民氏ら党最高指導部を紹介してもらい、その親族らに食い込んでいった。
アリババの主な株主は公表されていなかったが、今後ニューヨーク市場に上場予定であることから、大口株主を開示したところ、江氏の孫の江志成氏や劉雲山・党政治局常務委員の子息、劉楽飛氏、陳雲・元常務委員の子息である陳元氏ら太子党の経営する企業が名を連ねていることが分かった。これら企業の保有株式の割合は0.47%から1.1%の間だが、今回株式上場すれば、アリババの時価総額は2000億ドルに上ると推定され、たとえ持ち株比率が0.47%でも、9億4000万ドル(約1000億円)もの巨利が転がり込むことになる。
ニューヨーク・タイムズの報道について、アリババ側は声明を発表し、「当社の唯一のバックグラウンドは市場である」と反論している。とはいえ、馬氏は1989年の天安門事件について「武力弾圧はトウ小平氏の完璧な決断ではないが、最も正しい決断だ」と述べるなど、共産党政権を擁護する発言を繰り返しており、米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「明鏡新聞網」は中国情勢に詳しいジャーナリスト、陳小平氏のコメントを引用して、「中国の風雲児の源泉は太子党との密接な関係であることは間違いない」と指摘している。