「楽しくなければテレビじゃない」をスローガンに勢いのある番組を作り続けたのは、今は昔の話。視聴率低迷が続くフジテレビ。全社員の3分の2にあたる1000人の大異動などテコ入れに必死だ。この改革を断行している同局の亀山千広社長の方針に、局内外から疑問の声が噴出している。
13年ぶりに復活した、木村拓哉主演の月9ドラマ『HERO』(フジテレビ系)が、初回26.5%の高視聴率を記録。亀山氏はプロデューサー時代、木村の出世作『ロングバケーション』を手がけたことから、今回も木村を口説き落としたと報じられている。
ドラマの人気こそ視聴率奪還の起爆剤だと考え、リメイク作品を掘り起こすのはいかにもドラマ畑出身の亀山氏らしい考え方。これに疑問を呈するのがあるテレビ関係者だ。
「例えばTBS。去年、ドラマ『半沢直樹』であれだけ沸いたにもかかわらず、ほかの番組の視聴率アップへの波及効果は少なく、未だに民放の3~4番手に甘んじています。視聴者はシビアですから、ひとつの番組が面白かったとしても、その局のほかの番組を見る、ということにはなりません。もっと抜本的な改革をやらないとフジの再浮上は難しい」
実際、『HERO』翌15日のフジテレビの番組は『めざましテレビ』以外1日中オールひとケタ台と低迷。同じドラマでも柳葉敏郎主演の『あすなろ三三七拍子』は7.7%と、かなりつらい出だしだった。『GTO』『若者たち2014』の続編・リメイク作品もひとけた台というありさまだ。『HERO』効果で『SMAP×SMAP』が高視聴率を記録しているが、局全体の番組に波及効果を呼んでいるわけではない。
亀山社長は全社員約1500人の3分の2に当たる1000人を異動させたと発表している。ドラマ、バラエティー、情報など各制作部の責任者を呼んで、欲しい人材をリストアップ。それに基づいた創立以来初の大異動を断行したが、これに関しても関係者は、こう述べるのだ。
「この異動で起きているのは、今のところ局内外の混乱だけです。誰が次の窓口になったのか、出入りの芸能プロタダクション関係者は把握するのにてんてこ舞いですよ。もちろん担当者の引き継ぎもしばらくかかるでしょう」
亀山氏といえば、プロデューサーとして大成功に導いた『踊る大捜査線』以降、メディアの寵児とたたえられ、2004年から2010年まで7年連続で視聴率トップを独走していたフジテレビのいわばスポークスマン的存在。だが、フジテレビに出入りのある制作会社スタッフは、亀山氏の発信力にこう首をかしげる。
「社長就任後も、『PK戦でもいいからとりあえず(視聴率)2位にしがみつきたい』などと発言することは、他局の社長の発言より俄然注目されることではありますが、逆にその必死さがリアルに伝わってしまう。業界内さらには視聴者にさらにフジテレビはダメというイメージを植え付けかねません。実際タレントの中にもCXへの出演を躊躇、敬遠する人もいます」
亀山氏がフジテレビ再生の“HERO”になるまでには、まだまだ道のりは遠そうだ。