若い世代ならともかく、団塊世代なら年金は勝ち逃げできると考えられていたのは過去のこと。政府と厚生労働省は、受給額をカットする企みを着々と進行中だ。年金制度を利用して、得するテクニックからひとつ、紹介する。たとえば、65歳から受け取る年金には、受給を「繰り下げる」制度と、「繰り上げる」制度がある。
最大5年早く(60歳から)受け取ることができる繰り上げ受給は、年金額は〈繰り上げた月数×0.5%〉の割合で減額される。逆に、繰り下げ受給の場合は〈繰り下げた月数×0.7%〉の割合で増額される。
では実際の受給額はどうなるのか。基礎年金が満額(年間約77万円)であれば、最大の60歳まで繰り上げると30%減の約54万円になる。トータルの受給額ではおおよそ76歳より長生きすると損になる計算だ。
一方、70歳まで繰り下げると受給額は約110万円(約1.4倍)となり、82歳以上まで長生きすると得になる。悩ましい選択だが、年金博士として知られる北村庄吾氏(社会保険労務士)はこう指南する。
「65歳まで生きた人の平均寿命は男性で84歳、女性で89歳程度です。長寿化している現状を考えると、年金額が減ってしまう繰り上げは損する可能性が高い。65歳以降も再雇用や再就職で働ける人の場合、給料だけで十分生活できるのであれば繰り下げを選択して年金額を増やすほうが得策。貯蓄や他の収入がある人も同様です」
繰り下げ受給を決めたあと、体調を崩したり、仕事を辞めるなどしてすぐに受給したくなった場合には、その時点から受け取ることもできる。
※週刊ポスト2014年8月15・22日号