この夏で終戦から69年を迎える日本。櫻井よしこ氏が、日本人が今考えるべきことについて言及した。
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世界が混沌とするなか、米国の国力が相対的に低下し、オバマ大統領は昨年9月、アメリカは世界の警察官ではないと国民に向けて演説しました。その間隙を縫うように中国は、国際法を無視して力ずくの膨脹を図っています。その脅威にどう対峙するかは日本の喫緊の課題です。本来、日米と民主主義、法治主義などの価値観を共にするはずの韓国までも歴史問題で中国の側に立ち、世界中で事実に基づかない反日キャンペーンが展開されているのは残念でなりません。
この難局を打開するために我々はどうするべきでしょうか。それは中国のように法を無視して力を誇示するのではなく、ましてや韓国のように嘘をまき散らすことではありません。まず何よりも、私たちにもともと備わっていた、内なる力を取り戻すことでしょう。
具体的にいえば、日本の文化や歴史を知り、日本人の誇りを取り戻すことです。
かつて米国の政治学者、ハンチントンが指摘したように、日本は独自の文明を古から育んできました。そのことを改めて認識するよい機会となったのが、高円宮家の次女・典子さまと出雲大社の祢宜を務める千家国麿さんのご婚約です。
天皇家は天照大神の子孫、神武天皇を初代とし、125代にわたって万世一系の血筋を保ってきました。一方の千家家は天照大神の次男である天穂日命を祖先とし、出雲大社の神事を司る出雲国造を84代にわたって務めている家柄です。
2700年の時空を超えて皇室と千家家が結ばれるこんなフェアリーテイルが実現する国は、世界に唯ひとつ、日本しかありません。
習近平主席は中国5000年と言いますが、それはあの土地にさまざまな民族が入れ替わり立ち替わり入ってきて王朝を築き、易姓革命という興亡と殺戮の歴史を繰り返してきただけのことで、継続性はありません。
世界には27の王室が存在しますが、皇室に次ぐ歴史をもつとされるデンマーク王室でも約1000年、その他の王室は数百年です。他国から来た国民とは民族が違う王家もあります。
他国の王室が武力や財力によって王位を勝ち取り、権力によって国家を統治してきたのに対し、日本の皇室は神話の時代を源流とし、日本人の心の拠り所として国民統合の求心力になってきました。いつの時代も、国民との距離の近さと、心を通い合わせることが皇室の基本です。日本の国柄、日本人の特質を作りあげてきた第一の資質は、皇室による精神的な統治に他ならないと思います。
※SAPIO2014年9月号