8月4日、美術評論家の山田五郎氏率いるプロジェクトが手がけるトークイベント「ヘンタイ美術館」(エキサイト・イズム主催)第2回が開催された。同プロジェクトは、“西洋美術の大家だと思われている天才たちも、実はかなり「どうかしちゃってる」ひとばかり”ということに目をつけ、手が届かないと思われがちな芸術家たちの人間くさい魅力にスポットをあてたもの。“館長”は山田五郎氏が務め、“学芸員見習い”であるコピーライターのこやま淳子氏を相手に、西洋美術の“ヘンタイな見方”を伝授する。
五郎館長 ならではの軽快なトークにより、彼らがどうして傑作を残せたのか、そしてどうしてそれが傑作なのかを学ぶことができるとあって、4月に行った第1回「ルネサンス三大巨匠、ダ・ヴィンチ・ミケランジェロ・ラファエロ。いちばんのヘンタイは誰だ!?」は大盛況。好評を受けての第2回のテーマは「やりすぎバロック;カラヴァッジョ・ルーベンス・レンブラント」だった。
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確かに常人には考えつかないことをやったり、絵や形にできたりするのが芸術家と思えば、「ヘン」であることには納得がいく。だが、どう「ヘン」だったのか。
例えばカラヴァッジョ。五郎館長は、まず「お札になるぐらい有名」「本国イタリアでは、レオナルド・ダ・ヴィンチの次ぐらいに偉い」と、実にわかりやすく聴衆を誘導。しかし、続けて「ミラノで役人と喧嘩して、傷害罪になっちゃった」と、かなり“暴れん坊”だったことを明かす。絵については、「果物を描くのが上手い人っていうことで売りだす」として『果物かごを抱く少年』を紹介したかと思えば、『蛇の聖母』に描かれている老婆について、
「(聖母を)これまでそんなにおばあさんっぽく描く人はいなかったのに、リアルおばあちゃんに描いちゃった」
など、“リアル性”が特徴で、常識を覆した画家であることを解説する。
そして、『ホロフェルネスの首を斬るユディト』では、こやま氏が「なんでこんな(人の首を切るような)瞬間を…(描いちゃったんでしょうね)」と理解不能な表情を見せると、五郎館長が「劇的瞬間を切り取り、明暗をもって描くことが多いのが、バロックの特徴」と説明。
その上で五郎館長は、カラヴァッジョの出世作で、マタイが改宗してイエスに従っていくという聖書の場面を描いた『聖マタイの召命』を紹介し、そうした「劇的瞬間」と「明暗性」を、光と影の対比として強く描くことによって代表作を完成させたのだとまとめた。巧みな話術により、カラヴァッジョがリアル性を追求しつつ、光と影を描いてきた画家という流れがわかりやすい。