衝撃波は、何かにぶつかったときにエネルギーを発する特性がある。これを医療に応用したのが泌尿器科分野での結石治療で、体外から強い衝撃波を照射し尿路や腎臓などの結石を粉砕し体外に出す。
1990年頃、これらの治療中に痛みが軽減した、あるいは骨折後に骨がつかない偽関節(ぎかんせつ)が改善したという報告がヨーロッパからなされた。これがきっかけで整形外科分野での使用が始まり、日本でも2008年頃から厚生労働省の認可が下り、臨床現場で結石治療の約20分の1という小さい出力の衝撃波治療器による治療が行なわれている。
千葉大学医学部附属病院整形外科、衝撃波外来の落合信靖助教に話を聞いた。
「スポーツをする中高年やパソコンを駆使するビジネスマンで、テニス肘に悩む方が増えています。モノをつかんで動かそうとすると痛みが出ますが、軽傷では安静にして湿布や外用薬、バンド装着、リハビリテーションなどの保存療法を行ないます。効果がない場合は、体外衝撃波照射を行ないます。照射後、比較的早く痛みが軽減する方もいらっしゃいます」
整形外科における体外衝撃波の効用は3つある。骨をつける作用と、痛みを取る作用、さらに体内にできた石灰を砕く作用だ。骨折後の骨がつかない偽関節に衝撃波を照射すると、新たに小さい骨折や出血を起こし、骨を再生させる能力が促進され骨がつく。スポーツ選手の治りにくい疲労骨折でも効果を上げている。
慢性のテニス肘やゴルフ肘、足底腱膜炎などは、骨と筋肉を繋ぐ腱付着部が炎症を起こし、次第に変性して痛みが起こる。患部に神経が集中して自由神経終末が増加し痛みが生じるため衝撃波を照射すると痛みを感知する神経が壊され痛みが軽減する。長期的には衝撃波の照射で微小な出血等が起こり、サイトカインなどが放出され、腱の再生を促す。
これらの作用で、照射した患者の70~80%で痛みが軽減する。肩関節の痛みを引き起こす石灰沈着性腱板炎は、衝撃波を照射することで、石灰に小さい傷ができ、異物を排除しようとする作用が働く。それで石灰を吸収させる細胞が集まり、石灰は消滅する。
「体外衝撃波治療は、症状により照射する強さや頻度、回数を設定することができます。骨折の場合は1回当たり4ヘルツ(1秒間に4回)を5000発、約20分照射します。腱の痛みでは2000~3000発照射します。慣れたら次第に強く照射します。偽関節は痛みを感じにくいので、強めに照射することが可能です」(落合助教)
治療にあたり、患者は体外衝撃波治療器の近くに座るか寝て、直径約15センチの弾力性のあるクッションのようなものに痛い場所を置く。併設の超音波で、患部をモニターで確認しながら照射する。2012年から、足底腱膜炎に対する体外衝撃波治療は保険承認されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2014年8月15・22日号