「夏休みの失速」が深刻化する巨人のなかで、「戦犯」に阿部慎之助が名指しされている。阿部は2001年の入団以来、攻守にわたって巨人の中心選手として活躍。何度も巨人に栄冠をもたらしてきた。だが彼も今年で35歳になった。野球選手としては下り坂にさしかかってもおかしくない年齢だ。数字の上でも衰えはハッキリ見えてくる。
●守備
今年の阿部は捕球ミスが目立つ。8月6日の横浜戦では、投球をバックネット方向に大きく逸らし、なんと鈍足のブランコに振り逃げを許した。
「原因は手だけで捕球しようとしていること。ヒザの故障が影響しているのか、左右の動きが鈍くなり、体でボールを止めることができなくなっている。晩年の城島(健司=阪神など)と同じ傾向です」(スポーツジャーナリスト)
『プロ野球なんでもランキング』(イースト・プレス刊)著者の広尾晃氏はこう分析する。
「守備範囲の広さを示すRF(Range Facter)が下がっている(7.82=2013年→7.21=2014年)のが気になります。動きが鈍くなっているのでしょう」
盗塁阻止率はリーグワースト2位。昨季から大幅に落ちている。
「阿部は決して弱肩ではありませんから、単純に衰えが原因。晩年の野村克也、今の谷繁の水準に近づいてきました」(広尾氏)
これでは投手陣も安心して投げられないだろう。
●打撃
今まで阿部を巨人の中心選手たらしめてきたのは、何といってもその打棒である。歴史的に貧打の捕手が多かった巨人にあって、天才とまで称されるバッティングは大きな魅力。だからこそ、原辰徳監督は一塁にコンバートしてでも、阿部をオーダーに残そうとしているのだ。
だが、打撃でも阿部の衰えを示す結果が出た。
「まず昨年より出場機会が減っているのに、打数が36増えている。これは四球が激減しているからです。長打にばかり目が行きがちですが、阿部が最も優れているのは選球眼。ボール球を滅多に振らないところでした。しかし今年は四球が減って三振が増えています」(広尾氏)
もう一つの注目点は、本塁打の減少(32本=2013年→11本=2014年 ※今年の場合、144試合換算すれば16本)と二塁打(17本=2013年→18本=2014年 ※同26本)の増加の相関だ。
「これまでスタンドインしていた球が柵越えしなくなったと分析できます。もはや阿部は怖い打者ではなくなったということを示しています」(広尾氏)
※週刊ポスト2014年8月29日号