シーズン開始前には「圧倒的戦力でぶっちぎりの優勝をする」などと評論家から予想されていた巨人だが、2位・阪神との差はなかなか広がらない。そのなかで、「戦犯」に捕手・阿部慎之助が名指しされている。攻守にわたってチームを支えてきた大黒柱が、データを見ると、その両方で衰えている以上、失速の責任を阿部に求める声が強まるのは仕方のないことかもしれない。野球評論家の江本孟紀氏は冷徹にいう。
「悲しいことですが、必ず訪れる世代交代です。巨人の今後を考える意味でも、どんどん小林(誠司)にマスクをかぶらせて実戦で成長を促したほうがいい。阿部は捕手にこだわりをもっているだろうが、一塁でバッティングに専念すべきです」
実は、阿部本人もそれを自覚し始めている。8月10日付『東京スポーツ』に掲載された巨人OB・前田幸長氏によるインタビューで、阿部はこう語っている。
「一塁を守っていることに(周囲は)『慎之助のプライドが傷つけられている』と感じているようなんですね。捕手に対するこだわりがないわけではないけど、僕は別に気にしていないんですよ。だって(一塁での出場が)許せないのであれば試合に出てないでしょ?」
野球評論家の藤田平氏の話。
「一塁を守るようになってから格段にバッティングが良くなった。守備での下半身への負担がなくなったのだろう。これまでは体のキレが悪いのに振り回すのでバットが遠回りをしていたが、何か吹っ切れたように打撃フォームがコンパクトになり、レフト方向へも流せるようになった。心配事がなくなり、手応えを掴めたのでしょう。阿部が元通りガンガン打つようになれば、巨人の調子も上向くと思いますよ」
チーム内外からの厳しい要求や批判にさらされるのも阿部が球界随一の実績を持つ捕手だからこそ。やはり巨人は阿部のチーム。リーグ連覇のカギは彼が握っている。
※週刊ポスト2014年8月29日号