さる7月10日、東京・元麻布の中国大使館に安倍政権の現職閣僚や野党党首など、与野党の有力議員たちがズラリと顔を揃えた。
自民党からは甘利明・経済再生相、茂木敏充・経済産業相、小渕優子・元少子化相、民主党は海江田万里・代表、みんなの党は浅尾慶一郎・代表らの錚々たる面々だ。
イオングループが進める国際交流「小さな大使」事業で来日した北京市の高校生訪日団の歓迎会だったが、日中関係が冷え込んでいるこの時期、一民間企業の親善事業にこれだけの有力政治家が集まるのは異例だ。しかも、自民党の出席者は日中友好議連幹部といった”いつものメンバー”ではなく、甘利氏、茂木氏、小渕氏といういずれもポスト安倍に名前が挙がる”将来の総理・総裁候補”たちである。
ホスト役の程永華・駐日大使の挨拶が政治的な意図を示している。
「中日関係は厳しい局面が続いているが、これは中国側が見たくないものだ。中国側はこれまで通り民間友好を重視し、各分野における交流と協力を支援していく」
日中関係の悪化を「見たくない」と言い切ったのである。
その翌7月11日にも、やはり同じ中国大使館で国会の囲碁議連と大使館員の交流囲碁大会が開かれ、民主党の菅直人・元首相の他、安倍政権から後藤田正純・内閣府副大臣らが参加した。
親善事業や文化交流を足がかりに関係改善をはかるのは中国外交の常套手段だが、「雪解けムード」の演出と単純に見るわけにはいかない。中国側はより明確な意図をもって日本政界への浸透を図っているからだ。
中国大使館では、このところ自民党の若手議員を数人ずつ集めて、非公式な意見交換会を頻繁に開いている。出席した1年生議員の1人は会合の様子をこう説明する。
「先輩議員に声をかけられて参加した。大使館では日本語が堪能な公使や書記官たちが応対し、政治的にデリケートな問題についても突っ込んだ話ができた。尖閣問題や安倍総理の靖国神社参拝問題などについて激論になったこともあるが、険悪なムードにはならなかった」
※SAPIO2014年9月号