児童精神科医の佐々木正美さんの20回に及ぶ講演会での話をまとめた『子どもへのまなざし』(著/佐々木正美・福音館書店)。1998年に刊行され、現在に至るまで版が50刷を超えるロングセラーだ。〈子どもを育てるということは、最高に価値のある、誇りのある仕事〉という佐々木さんの思いのもと、親は乳幼児期の育児をどのようにしていけばいいかが、事細かく平易な言葉で綴られている。女優の紺野美沙子さんもこの本に育児を支えられた。(取材・文/柳川悠二)
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私は文学少女ではありませんでしたし、自分が大切に読んできた本をご紹介するのも、自宅の本棚を覗かれるような気がして、とっても恥ずかしいことだったんです。ただ、佐々木正美先生のこの本だけは、子育てに関することだけでなく、人が生きていく上で大切なことをたくさん学んだ気がして、お友達の出産祝いなどにずっと贈っています。
私がこの本と出合ったのは、1995年に出産した息子が幼稚園の年少さんに通っていた頃でした。今になって振り返ると些細なことなんですが、当時の私は息子が他のお子さんより「言葉を覚えるのが遅いんじゃないか」「社交性がないんじゃないか」などと、小さな悩みをたくさん抱えていました。またNHK連続テレビ小説『あすか』に出演することになり、約9か月間も東京と大阪を往復する生活を送らねばならず、子育てと仕事の両立に大変な時期でした。
佐々木先生は児童精神科医のお立場から、子供の話に大人が耳を傾けてあげることが大事で、「あれはダメ」「これはダメ」と子供の行為を否定するばかりではなく、常に前向きな声がけをすることが大切だとこの本に書かれています。
私も育児に疲れると、ついヒステリックに怒ってしまいがちでした。そんな時にこの本を読み返しては反省し、親子の背を押してもらいました。「育児は育自」ともいわれますが、私ってやっぱり駄目だなと思った時に、それでも前向きに思えることが大事なんだって、私も育児を通じて成長できたような気がします。
現代においては、小学校や中学校でも激しい「競争」があります。子供たちにとっては、時間に追われずにのんびりできる場所が少なくなってきているのではないでしょうか。
ですから、私は息子にせめて家庭の中だけはだらりんとする生活を送らせたかった。具体的に言うと、食事中に食べ物を落としたら「3秒以内なら拾って食べていいよ」と伝えたり(笑い)、お友達が遊びに来たら、押し入れから布団に飛び降りるちょっとだけ危険な遊びを容認したり。
何事も大目に見るようにしてきましたし、お稽古事も本人が嫌がることはさせませんでした。私の場合、息子をのんびりさせすぎたかもしれませんが(笑い)、優しい男性に育ってくれたようにも思います。
息子が生まれて以来、毎年4月の結婚記念日に、主人と息子と3人で写真を撮っています。今年もリビングに19枚目の写真を飾ることができました。大学生の息子は間もなく20才を迎え、私の子育ても一段落です。
※女性セブン2014年8月21日・28日号