死の間際「これまでの人生が走馬灯のように次々と浮かんできた」「お花畑が見えた」というのはよく聞く話。科学でも宗教でも解明しきれない、臨死体験を聞いた。
幼少期からの記憶が次から次へと蘇る「走馬燈」を見ていたであろう母の姿を思い出すのは、主婦の吉住香苗さん(38才・仮名)だ。 「胃がんだった母が亡くなる4日前のことです。天井の一点を見つめながら、『お母さん』『○○公園』『○○山』『○○さん』などと小さいけれど聞き取れる声でつぶやき始めたんです。
母の口から出てきた地名や人の名前は、わからない内容もあったけれど、母の故郷とか昔住んでいた場所、きょうだいや親しかった友人の名前も呼んでいました。『ありがとう』とも言っていました。母はそのまま意識不明になって亡くなったので、どんな光景を見ていたのかわからないけれど、昔のことを思い出していたんだと思います」 ふっと体が軽くなり幽体離脱を経験するのも生死の境をさまよっているときのことが多い。「小学4年生の時、自分を上から眺めていた」と話すのは横山葉子さん(37才・仮名)だ。 「交通事故に遭い3日間意識不明だったとき、私は天井から病室を眺めていました。点滴のチューブにつながれている私を囲んで、私の手を取る母と父がいました。病室の外には妹もいました。壁が透き通っていて廊下まで見えるんです。
最初は横になっているのは誰だろうって思ったけれど、母が泣いているから私なんだってわかって。まるで夢の中にいるようで痛くはなかったけど、自分の体に戻らなきゃと思った」 一般社団法人「日本看取り士会」代表理事の柴田久美子さんも小学5年生のときに幽体離脱を経験している。 「小児ぜんそくだった私は寒い冬の日に病状が悪化しました。気がつくと、母が自宅で私の体を抱いて涙を流していて、離れた別の部屋で医師が父に『娘さんは今夜が山ですね』と告げると、父が『ありがとうございます』と頭を下げていました。
私は天から見下ろしていたので、別の部屋にいた父も見えたのです。私は必死で母に『泣かないで』と話しかけていました。ぜんそくの苦しさもなく、なんだか気持ちがよくていい世界だと思ったんですね。本当に空を飛んでいたんですよ。で、翌朝気づいたら私は母の腕の中でした」(柴田さん)
※女性セブン2014年8月21日・28日号