『胎内記憶』という言葉を初めて耳にする人も多いだろう。世界における胎内記憶研究の第一人者で、胎内記憶を持つという子供たちの証言を中心に構成された映画『かみさまとのやくそく』にも登場する、産婦人科医の池川明さんはこう話す。
「胎内記憶とは、母親の胎内にいた時や出産時の記憶です。私が本格的に調査を始めたのは1999年のこと。
現場の助産師が、お腹にいた時のことを覚えている子がいるという事実を、当たり前のように話していたのがきっかけでした」(池川さん、以下「」内同)。
欧米では1970年代から胎児や新生児の能力とその時期の記憶に関する研究がされ、1980年代後半には、その翻訳本が日本でも出版されたこともある。しかし、それらが世間に浸透するほどには、話題にならなかった。
池川さんが調査を始めた当初も、小児科医に胎内記憶の有無について聞いてまわったが、失笑を買っただけだったという。当時の医学界において、胎児に記憶があるなんてことは、科学的にありえないと思われていたのだ。
しかし、池川さんは諦めなかった。診療のかたわら、母親や子供たちへの聞き取り調査を続け、2002年から翌年にかけて、長野県諏訪市と塩尻市で千人規模の調査を実施。そこで、想像以上の結果がもたらされた。
「約3割もの子供に、胎内記憶があることがわかりました。それも、言葉が話せるようになって間もない2~4才の子に圧倒的に多い。
子供たちが語る記憶は“暗くてあたたかかった”“水の中に浮かんでいた”など、ほとんどがシンプルな内容でしたが、中には、かなり詳細な記憶を持つケースもありました」
大人が声をすくい上げなかっただけで、胎内記憶を語る子供は、存在したのだ。
例えば、ある母親が自分の子供に胎動が少なかった話を何の気なしにしていたら、「ママが痛いって言ったから、かわいそうだと思って動くのをやめたの」と、娘のほうから話してきたという。その子は、当時4才だった。
また、妊娠初期に子宮筋腫が見つかった母親によると、2才半になった娘が、「お腹の中に何かあったでしょ。それが大きくなってつぶされたらどうしようって、怖かったんだ。ママ、ちゃんと(無事に)産んでくれてありがとう」と言い出したという。
子宮筋腫のことは夫にしか話していなかったので、とても驚いたそうだ。
■話者の年齢はすべて、聞き取り調査をした当時のもの。
※女性セブン2014年9月4日号