最近はゆるキャラが大ブーム。熊本県の「くまモン」は、県の許可があれば、個人や企業がロゴとキャラクターを無料で利用することができるようにして大成功を収めたが、「小学校の運動会でゆるキャラを使用したい」というようなケースは、著作権違反にならないのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
小学校の教師です。アニメの装飾をほどこした幼稚園バスを見かけるたびに、権利関係はどうなっているのかと疑問に思っていたのですが、私どもの学校でも秋の運動会で、流行のゆるキャラの着ぐるみを作り、応援合戦に駆り出したいという案がでました。こういう場合、著作権違反になりませんか。
【回答】
ゆるキャラの着ぐるみは、オリジナルなものであれば、立体的な著作物として著作権の対象になります。その着ぐるみを作った人が著作者になり、著作者人格権と著作権を取得します。
著作権者は、著作権の使用の許諾や譲渡ができますが、著作権者の了解なく、まねた着ぐるみを作ることは、著作権に含まれている複製権の侵害です。また他人の著作物を複製するときに、著作者の同意を得ずに勝手に改変すると、著作者人格権に含まれる同一性保持権の侵害となります。こうした著作権法違反には、罰則の適用もあり、安易に他人の著作物を利用することは危険です。
しかし、あまり厳格に解すると著作権制度の大きな狙いである文化の発展への寄与に支障をきたします。そこで、一定の要件の下で自由な利用を認めるべく著作権にも制限があります。
たとえば、家庭内で鑑賞するためテレビで放送された映画を録画するなどの私的利用、あるいは学校教科書への掲載などです。学校で「授業の過程において、当該授業を直接受ける者に対して、当該著作物をその原作品、もしくは複製物を提供し、あるいは提示して利用する場合」も同様です。学校行事である運動会も特別授業として、この授業の過程に含まれると解されます。
となれば、運動会の活動の一環としてゆるキャラの着ぐるみを作ることは可能であると思います。ただ、運動会での一時的な利用であっても出所を示す慣行があれば、それにしたがって、著作者等の表示をしておく必要があります。なお、その着ぐるみを街頭などで利用すると、著作権の侵害になりますから注意してください。
また、ゆるキャラの着ぐるみが意匠登録や商標登録されていると、非営業的な私的利用以外は権利侵害になり、権利者の同意を得ておく必要があります。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2014年8月29日号