いま急成長しているスマートフォンアプリを使ったタクシー・ハイヤーの配車サービス「Uber(ウーバー)」は、すでに日本でサービスを始めているが、日本では“岩盤規制”が事業展開を妨げているのが実情だ。官庁による規制の実情について、大前研一氏が解説する。
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ウーバーは現在、六本木などの東京都心部だけで黒塗りハイヤーの配車サービスを行なっている。料金は基本料金103円に時間料金が1分ごとに67円、距離料金が1kmごとに308円加算され、最低料金が823円、キャンセル料が1029円だ。通常は普通のタクシーより2~3割ほど高くなるが、距離が2割短くなって計算される深夜割増料金の時間帯だと、深夜でも料金が変動しないウーバーのほうが安くなるケースが多いという。
しかし当面、ウーバーが日本で海外のように普及することはないだろう。日本のタクシー・ハイヤー事業は許可制で、まさに“利権と規制の塊”だからである。
タクシー・ハイヤー事業を行なう場合、国土交通大臣から一般乗用旅客自動車運送事業の許可を得なければならない。タクシーやハイヤーの運転手になるためには、法人は第2種運転免許の取得、個人はさらに10年以上のタクシーやバスの運転手経験などが必要となる。
海外では自動車を持っている一般人もウーバーに登録すればタクシー・ハイヤーとして営業できる国が多いが、日本ではプロの運転手しか営業できないのだ。このため日本のウーバーは今のところ日本法人がタクシー会社と提携してサービスを展開しているとみられ、今後はさらに多くのタクシー会社や個人タクシーと提携するしか、事業を拡大していく方法はないのである。
ウーバーはGPSで客の最も近くにいる車が手配されるので、海外のように自動車を持っている一般人もタクシー・ハイヤーとして営業できるようになれば、流しのタクシーが容易に拾えない地域では非常に便利だ。提供者のほうもサラリーマンが夜や週末の空いた時間を利用してセカンドビジネスができるし、リタイアした高齢者が収入を得る手段にもなる。
こうしたサービスを認めるかどうかはそもそも自治体でやるべきで、国家が端から許認可するという発想を変えていかなくてはならない。信頼できるサービス提供者かどうかは、まさに地元自治体が判断すればいいということになる。
要するに、日本は中央官庁による“岩盤規制”がなくなりさえすれば、インターネットと組み合わせることにより様々な新しいビジネスを生み出せる。そしてSNS時代は、個人と個人を繋ぐことが商売になる。今後の大きなビジネスチャンスがここにある。
※週刊ポスト2014年8月29日号