中国の習近平・国家主席の盟友で、中国人民解放軍の総後勤部政治委員の劉源氏が10月に開催される中国共産党第18期第4回中央委員会総会(4中総会)で、党中央軍事委員会入りし、党中央軍事委員会副主席に昇格する見通しとなった。ロイター通信が報じた。
劉氏は国家主席を務めたかつての最高幹部の1人、劉少奇氏の長男で、習氏と同じく太子党(高級幹部子弟)の有力メンバーであり、習氏の軍内での権力基盤固めが狙いとみられる。習氏の腐敗一掃キャンペーンで、江沢民元主席を筆頭とする上海閥の有力幹部が狙い撃ちになっているだけに、党内で反発が出る恐れもある。
劉源氏は正義感が強く、舌鋒が鋭いことで知られる。軍ナンバー2だった徐才厚・元中央軍事委副主席が腐敗問題で今年6月下旬に党籍剥奪の処分を受けたが、そのきっかけを作ったのも劉氏だった。
劉氏は総後勤部の部下だった谷俊山・元同部副部長が汚職に手を染め、軍用地の転売に絡んで200億元(約3340億円)もの賄賂を受け取っていたことを知り、当時の胡錦濤・中央軍事委主席らが参加した軍の会議で谷氏の不正を告発した。谷氏の自宅からは純金の毛沢東像や1万2000本以上の中国の最高級酒であるマオタイ酒が見つかったといわれる。
谷氏は2012年に軍の役職を剥奪され、いまは刑事被告人として公判を待つ身だ。
その谷氏を総後勤部副部長に昇格させたのが当時の中央軍事委副主席だった徐才厚氏だ。谷氏は自身の昇格のために、徐氏に4千万元(6億6800万円)もの賄賂を贈っていたといわれる。いわゆる「買官」だ。このほか、谷氏は徐氏の娘の結婚式で、2000万元入りの銀行通帳を渡すなど、折りに触れて、袖の下を使っていたことが分かっている。
徐氏は谷氏から多額の現金を受け取るなど、収賄額が10億元(約167億円)は下らないとされる。党籍剥奪処分を受け、谷氏同様、公判を待つ身だが、末期がんといわれ、このまま獄中で死亡する可能性もある。
徐氏は江沢民氏に近く、上海閥の軍高官であり、江氏も内心は処分には反対だったが、習氏に押し切られた格好だ。それでなくとも、腐敗事件で立件・調査されていることが発表された周永康・元党政治局常務委員も上海閥で、周氏の事件で逮捕されている300人の関係者の大半が上海閥だけに、党内では習氏の強引なやり方に反発が高まっていると伝えられる。
そのようななかでの劉元氏の軍事委副主席昇格人事には、上海閥からの反対がとりわけ強いといわれる。ロイター電は著名な軍事専門家である黄靖・シンガポール大学教授の発言を引用して、「劉源氏の反腐敗姿勢についてはよく知られており、彼の軍事委副主席昇格によって、習近平指導部への強い反発を生むことが予想される」と指摘し、劉氏への反感が習氏に跳ね返り、習近平指導部に影響を及ぼす可能性があるとの見方を明らかにした。