ライフ

不倫まで「壁」一枚のエロティックな関係描く漫画『うきわ』

【漫画紹介】『うきわ(2)』野村宗弘/小学館/596円

 夫は、「うわき」をしている。問い詰めることもできず、心もとなく漂流する私に、隣のご主人は「うきわ」を投げて、助けてくれた…。夫に浮気され傷ついた若い女と、いつも家にいない(たぶん浮気をしている)妻を待つ中年男の関係を描く野村宗弘『うきわ(2)』(小学館)。

 主な舞台は社宅のベランダ。夫の上司でもある隣人に、壁越しに悩みを吐露するうち、女はすがるように急速に思いを高めていきます。男のほうはもう少し冷静。けれど自身の寂しさと、女への同情と、女の若さ美しさへの抗い難い感情とが混じりあい、愛しさが生まれます。堂々と会えるのは、早朝のゴミ出しの時(ふたりともパジャマ姿)だけでしたが、「相談」として食事に行った帰り道、女は思わず男の手をとってしまい…。

〈緊急時には、この壁を突きやぶって隣りへお逃げ下さい〉。ベランダの薄い壁にはこう書かれています。男にとっては〈この壁は理性を保つ防護壁〉ですが、女はその壁を突き破りたい衝動に何度も駆られます。

「不倫」のギリギリ手前で踏みとどまるふたりの姿が危なっかしくも、もどかしく。一瞬ほのぼのとした情景が差し挟まれるのも、せつなさを増幅させます。不倫カップルのドロドロのベッドシーンを見せられるより、薄い〈壁〉を前に立ちすくむふたりの姿が延々続くほうがなぜかずっとエロティックで…。不倫容認派の人も否定派の人も、壁のこちら側で息を殺してふたりの動向を覗き見たくなるはずです。

(文/門倉紫麻)

※女性セブン2014年9月4日号

関連記事

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト