日本国内で推定6万~7万人。これは生まれつき子宮がなかったり、子宮がんなどのために子宮を摘出した20~30代の女性の数だ。今、そんな女性たちに、“出産する”という希望の道が開かれようとしている。
8月17日、産婦人科医と、東京大、京都大、慶應大の研究チームなどで組織された『日本子宮移植研究会』が、国内での子宮移植実施に向けた指針の作成を決定した。
指針案には、
【1】移植を受けるのは生まれつき子宮がなかったり、がんなどの治療で子宮を摘出したりした女性を想定
【2】子宮の提供者は、移植を受ける女性の母親らのほか、心停止した女性や脳死となった女性を想定
【3】提供は自発的な意思によらなければならない
【4】営利目的による子宮の売買斡旋を禁止する
といった項目が盛り込まれた。医学博士・狭間研至氏は、こう解説する。
「女性の不妊の悩みが社会問題化し、子宮移植の必要性が叫ばれたことが、今回の指針作成決定につながりました。
子宮移植が実現すれば、妊娠・出産を諦めていた多くの女性たちに、大きな希望が与えられることになります」
現在、出産できない女性が子供を望む場合、養子をもらうか、他人の子宮を借りる“代理出産”に限られる。しかし、日本では代理出産は法律で認められておらず、海外で行った場合でも、戸籍上の母親は代理母ということになる。
2003年に、米国での代理出産を選択した向井亜紀(49才)が、子供を実子とする届けを受理されなかったことを覚えている人も多いだろう。それゆえ、名実ともに“我が子”を授かることができる子宮移植が、スポットライトを浴びているのだ。
子宮を移植された患者が、拒絶反応を起こす可能性もあり、その拒絶反応を抑えるために投与される免疫抑制剤が胎児に与える影響も、検証途中だという。
さらに、臓器移植は、“患者の命を救うため”と臓器移植法で定義されているため、“子宮の移植はその定義から外れている”という指摘も根強く残る。それでも、悲観的になる必要はない。狭間氏は、次のように言葉をつなぐ。
「子宮移植は、“命とは何か”という倫理的な問題を含み、慎重な議論が必要です。それでも、研究が進めば、母体、胎児ともに安全を確保したうえで、子宮移植からの妊娠・出産が可能になるでしょう。恐らく、あと5年ほどで、実用化の目処が立つと思います」
※女性セブン2014年9月4日号