PL教団を母体とする名門・PL学園高校野球部が甲子園から消えて5年が過ぎた。昨年2月に暴力事件が発覚し、高野連から6か月の対外試合禁止処分が下されると、監督の河野有道氏が辞任。野球未経験の校長・正井一真氏(66)が臨時措置として監督に就任したが、現在も正井氏が監督のまま、実質指揮官不在の異常事態が続いている。監督人事をめぐって同校ではどのような事態になっているのか、ノンフィクションライターの柳川悠二氏がリポートする。(文中敬称略)
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揺れる監督人事について中村順司、河野有道、藤原弘介という歴代監督に連絡を入れたが一様に「教団から離れた人間がお話しすることはありません」という答え。教団からは「一切コメントいたしません」との回答だった。
今も監督の座にある正井は監督探しを怠っていたわけではない。
「中学から本校で学ばれ、PLのメンタリティーを理解されている金森栄治さん(西武ほか)にお願いしてみてはどうだろうと相談していた矢先に、金森さんの去就(金沢学院東高校の監督就任)が決まったのです。布教師のお子さんで野球部出身の方にお願いすることも考えています」
とはいえ「教団の意向」に沿う人選は容易ではない。そんな中で取り沙汰されるのが、黄金時代を築いた桑田真澄の監督就任だ。桑田は現在、東大野球部の臨時コーチを務め、学生野球にも一家言ある野球人だ。
「桑田さんを推しているグループがあるとは聞いています。私が直接お話ししたわけではありませんが、野球部についてどう思っていらっしゃるか訊ねると、桑田さんは『教団あっての野球部で、教団の中心は教主。教主の教えに沿うことがPL学園野球部の理想的なあり方だと思っている』ということを話されたそうです。とにかく今は、ふさわしい監督がいれば……という“待ち”の状態です」(正井)
名門は復活を果たすのか、甲子園の大舞台から姿を消すのか、いよいよ岐路に立たされている。
※週刊ポスト2014年9月5日号