発生から1週間が経過した広島県の大規模な土砂崩れ災害。そもそも広島県は土砂災害が起きやすい地域だった。
1999年6月29日にも、広島市では死者20人を超える土砂災害が起きており、これを機に国は『全国土砂災害危険箇所マップ』を作成したほどだ。
それによれば広島県の土砂災害危険か所は3万1987か所にのぼり、全国最多である。防災都市計画研究所の吉川忠寛所長が語る。
「広島県内は、水を含むと崩れやすくなる、『真砂土(まさど)』と呼ばれる地質が広がっているんです。今回のように、2~3時間で200mmを超えるような豪雨が降った場合、真砂土が崩れやすくなります。さらに、山の多い広島は、それだけ谷筋の傾斜がありますから、これら2つの条件から、土砂崩れが他県よりも発生しやすいんです」
広島はもともと地盤が弱く、地下鉄はつくれないといわれていたほどだ。中国地方の中核都市で、人口は100万人を超える。
しかし、人口の割に極端に平野部が狭く、昭和40~50年代にかけては人口増加に伴い市北部の山間部を切り開いての宅地造成が進んだ。なぜ、危険な山に、と思うかもしれないが、住宅地確保のためには致し方ない実情が広島にはあったのだ。
「今回土砂災害が起きた安佐南区の八木や緑井は、山を切り開いてできた新興住宅地が多く、まさに危惧されていた事態が起きた形なんです」(安佐南区八木の住人)
ちなみに、今回の土砂災害で家を失った人には、被災者生活再建支援制度が適用され、全壊で100万円、大規模半壊で50万円の支援金が国から支給されるという。
このほか、住宅を再建する場合には建設や購入で200万円、補修に100万円、アパートなどを新たに借りる場合には50万円が支給される。
「でも、実際にはこんな金額で生活を再建するなんて無理です。自宅が全壊した人のなかには、まだローンを払い終わっていない人も多いし、半壊した人だって、取り壊すのにまた費用がかかります。それに、こんな土砂災害のあった土地は売れないし、新たに家を買おうにも、国から支給される金額は、自宅が全壊した人でも合計300万円です。被災者にはこれからローンの二重苦が待っているわけです」(地元住民)
※女性セブン2014年9月11日号