日本スケート連盟会長の橋本聖子参議院議員(49)が、フィギュアスケートのソチ五輪代表・高橋大輔(28)にキスを強要したと報じられ、責任問題になるかと注目されていたが、高橋が「セクハラやパワハラがあったとは一切思わない」「大人と大人が羽目を外しすぎた。すみません」と謝罪会見を行なったことが、かえって問題の深刻さを浮き彫りにした。
橋本議員が高橋にキスを強要したと報じた『週刊文春』によると、高橋は橋本氏に逆らえずキスを受け入れたとされ、確かに掲載された写真でも橋本氏の“攻撃”から顔を背ける高橋の姿が写っている。
が、なぜか謝罪したのは“被害者”の高橋で、橋本氏は「キスの強要はない。外国の選手などとの交流が多いため、ごく自然にハグやキスをする」と自らを正当化するコメントを発表したのみだ。
これで済まないことは、もし男女の立場が逆でもそう言えるのかを想像すればわかるだろう。労働問題に詳しい戸塚美砂弁護士はこう指摘する。
「一般的なセクハラ研修は、男性上司が加害者、女性部下が被害者のロールプレイングになっているため、本人も企業のコンプライアンス担当者も女性が加害者になるという問題意識が低いのです」
今や男性上司から女性部下へのセクハラはさすがに御法度だという認識が徹底されているが、男女が逆になると大目に見られがちだ。
そのため、女上司のセクハラはエスカレートの一途をたどり、その実態は男のセクハラより下劣なケースもあるという。証券会社勤務の20代男性がボヤく。
「酒席で若い男性社員が女上司にセクハラされるなんて当たり前。同僚はキスどころか、体を求められたという。困って男の上司に相談しても“我慢しろよ。それに少しくらいは嬉しかったんだろ?”と取り合うどころかからかわれたそうです。でも、男性上司が女性の部下にキスや肉体関係を迫ったとしたら大問題。被害者の女性だって泣き寝入りするなんてあり得ないでしょう」
前出・戸塚氏が22歳から39歳までの男性2500人に行なった調査では25.5%が女性上司、先輩にセクハラやパワハラを受けたことが「ある」と答えている。
今回のキス強要事件のように表面化するのはレアケースだ。戸塚氏はこう指摘する。
「女性上司によるセクハラは増えていますが、口には出せずに悩んでいる男性が多いことが窺われる。不当解雇の相談で理由を聞くうちに、女性上司の嫌がらせを受けたという話が出てくるのです」
現在、女性の管理職比率は約11%。安倍政権は指導的地位に占める女性の割合を2020年に欧米並みの30%に引き上げる目標を成長戦略に掲げている。
女性の社会進出が進むのは良いことだが、セクハラを含め、管理職として責任と義務も男性と同様に持てなければ、かえって社会が退化することにもなりかねない。
※週刊ポスト2014年9月12日号