「表彰式を見ていて、“なんか違うな”と思ったんです。74年間生きてきて、こんなへんてこりんな君が代を聞いた記憶がありません。絶対におかしいですよ」
そう語るのはテレビキャスターの鳥越俊太郎氏。8月21~24日にオーストラリアで開催された水泳のパンパシフィック大会をテレビ観戦した時の感想である。
この大会で日本勢はメダルを19個獲得する大活躍。しかし連日の表彰式を見るうちに、鳥越氏の違和感は強くなっていった。
「そこで録画した表彰式を何度も見返しました。すると、国歌吹奏の冒頭で『きーみーがーよーはー』のフレーズ(譜面上は第1、第2小節)が繰り返されていたことに気づきました。最初は大会本部が間違えたのかと思いましたよ」
鳥越氏がこの件をFacebookに綴ったところ大きな反響があった。
「いつから君が代に前奏がついたのか」(60代男性)
「聞き慣れず、不快に感じた」(70代男性)
一方で主に若い世代からはこんな声が上がった。
「前奏ありに慣れているからおかしいとは思わなかった」(30代男性)
「『前奏への違和感』に違和感があります。何が問題なのですか」(20代男性)
一体どちらが「正しい」のだろうか。他のスポーツイベントを調べてみた。
たとえばサッカー日本代表の試合では、ブラジルW杯では「前奏なし」を使用していたが、国際親善試合では「前奏あり」を使用。
「日本サッカー協会主催の国際親善試合では、観客が一体となって君が代を歌えるように前奏ありを使っています。FIFAやIOCの主催大会における国歌演奏の基準につきましてはお答えする立場にありません」(日本サッカー協会広報グループ)
国技・大相撲の表彰式前に流れる国歌も「前奏あり」だ。場内には、「前奏に引き続いて歌ってください」とアナウンスが流れる。
学校現場でも今や前奏ありが一般的だ。東京都立高校の入学式などでは、大相撲同様「前奏に続き、ご斉唱ください」というアナウンスが流れ、教諭がピアノで前奏を奏でる。東京都教育委員会はこう説明する。
「2003年10月に君が代の適切な演奏を求める通知を各都立高校に出し、入学式や卒業式では前奏を流すように求めています」
ゆえに若い世代に「前奏あり」は不思議ではないのかもしれない。しかし、これは君が代を歌う場合に限るという。
「体育祭などの国旗掲揚で国歌を演奏する際は、斉唱がないので前奏は流していません」(前出・東京都教育委員会)
やはり前奏は、「歌い出しやすくする」という便宜上の理由のようだ。
※週刊ポスト2014年9月12日号