西アフリカで猛威をふるうエボラ出血熱。8月20日時点で感染者2615人、死者1427人に上り、収束には半年以上を要すると見られている。
致死率最大90%とされるウイルスに対し、効果があると注目されるのが、アメリカの製薬メーカー「マップ・バイオファーマシューティカル社」が開発を進める未承認薬「ZMapp」だ。米国食品医薬品局(FDA)では未承認だが、WHOが投薬を許可。現在まで少なくとも10人に投与され、4人に改善が見られた。
だが、この薬は圧倒的に数が足りない。在庫は数百人分程度なので、投与する患者には優先順位を付けなければならない。FDAは、「(未承認薬なので)公式見解は出せないが、エボラの拡散を防ぐために第一線で働く人に優先して投与されるのが当然だ」という。実際、確認できる範囲ではすでに投与されたのは医師や看護師ら医療従事者だけだ。
そこにも順番がある、と語るのは米国の医療行政関係者だ。
「キリスト教慈善団体から派遣された米国人医師や、病院を拠点に活動してきたスペイン人宣教師といった宗教関係者が最初に投与された。製薬メーカーに多額の見返りを支払える資金潤沢な団体に近い患者から優先されている印象がある」
今後、薬の生産量が増えれば解決される問題なのだが、それも簡単ではない。
「マップ社は社員10人に満たず生産能力が低い。他の大手製薬メーカーで17種類の治療薬が開発中だが、遅々として進んでいない。1つの新薬を開発するには100億円以上の研究費がかかる。アフリカでしか発生していない病気の治療薬では、その投資費用を回収できるか疑問がある。だから大手は開発に積極的ではない」(同前)
厳しい現実だが、医療には常にカネの問題がついて回るのである。
※週刊ポスト2014年9月12日号