中国の習近平指導部が積極的に進める腐敗一掃キャンペーンで、高級幹部が次々と党の規律違反で身柄を拘束され取り調べを受けているが、このような腐敗幹部が役職を更迭されることは「落馬」と呼ぶ。
このなかでも山西省は今年に入って省級の幹部が6人も落馬し、「全国一の腐敗した省」との汚名を着せられている。同省は習近平・国家主席が敵視する共青団(中国共産主義青年団)閥が強いだけに、「露骨な共青団叩き」との見方が有力だ。
国営新華社通信によると、今年に入って山西省の現役幹部として、あるいは山西省幹部時代の容疑で落馬した省級幹部は金道銘・同省人民代表大会(省人代)副主任や申維辰・中国科学協会党組書記、国有企業である華潤集団の宋林・理事長兼党委書記、杜善学・副省長、令政策・同省人民政治協商会議(省政協)副主席。
これに加え、8月に入ってからは陳川平・省党委常務委員兼太原市党委書記、聶春玉・省党委書記兼省秘書長と、中国全土で落馬した腐敗幹部21人中7人と最多を記録。さらに、8月23日には同省太原市の柳遂記・公安局長も落馬するというおまけが付いた。
ちなみに、この2年間で落馬した同市公安局長は柳氏で3人目だ。党中央は柳氏の代わりに、北京の公安省治安管理局副局長の王汎氏を据えた。たかだか地方の市公安局長に北京の公安省の局長級をもってくるのは極めて異例。それだけ、党中央が山西省の腐敗を憂慮しているといえる。
だが、北京の党幹部筋は「たんに山西省の腐敗体質を改善させるだけでなく、別の意義付けもできる。それは共青団閥叩きだ」と指摘する。
山西省は胡錦濤政権時代、日本の官房長官に相当する党中央弁公庁主任の令計画氏の出身地であり、共青団閥の勢力が根強い。習氏も腹心であり、党員の規律違反を摘発する党規律検査委員会トップの王岐山氏に「山西省には、特に気をつけてほしい」と指示したと米国に拠点を置く中国情報専門の華字ニュースサイト「博訊( ボシュン)」は報じている。
「今後は現職の党高級幹部である令計画・党統一戦線部長兼政協副主席のほか、山西省トップの袁純清・省党委書記がターゲットになるのは必定。習近平の腐敗幹部摘発に名を借りた権力闘争は当分続く」と同筋は予測する。