視聴率低迷と業績悪化に歯止めがかからないフジテレビ。同局のドンである日枝久・フジ・メディア・ホールディングス会長が、社運を賭して推進しているのが「お台場カジノ構想」だ。
「日枝さんは株主総会で、お台場を国際観光戦略の拠点とした特区として事業化するというカジノ構想の部分をひときわ大きな声で説明していた」(同社株主の1人)
同社は大手不動産やゼネコンと共同でお台場を「エンターテイメント・リゾート戦略特区」にする計画を政府に申請している。
安倍首相もカジノ解禁には前向きで、この秋の臨時国会で継続審議中のカジノ法案を成立させる方針だ。日枝氏が期待を膨らませていたのは想像に難くない。ところが、そこに思わぬ難敵が立ちはだかった。舛添要一・東京都知事だ。
フジは蜜月関係にあった石原都政、それを継いだ猪瀬都政の下でカジノ構想を推進してきたが、舛添氏は記者会見(7月31日)で、「日本の法律では賭博は禁止されている。それが(特区なら)法律学的にできるという論理的な説明をきちんとできているのか。私が見ている限り、国会で十分議論されていない」と、冷や水を浴びせた。
しかも、カジノ誘致を担当する「大都市行政担当」を知事直轄部局から港湾局へと移管して事実上の「格下げ」をしてしまった。フジが慌てたのはいうまでもない。
そして日枝氏が駆け込んだのが安倍首相のところだった。この8月下旬、日枝氏は山梨県鳴沢村の別荘で静養していた首相に文字通り日参した。
8月17日に山中湖畔のホテルで首相夫妻と会食し、19日には首相夫妻や田中一穂・財務省主計局長らとゴルフ。翌20日にも首相や森喜朗・元首相らとのラウンドをスタートしたところ、安倍氏が広島の集中豪雨被害の対応のために急遽、東京に戻ってしまった。76歳の日枝氏はただでさえ猛暑の中の連日のプレーで疲労困憊のところ、さぞやこたえたのではないか。超党派のカジノ議連メンバーが語る。
「カジノ誘致には沖縄や大阪も名乗りをあげている。これまではお台場有利とみられていたが、東京都が慎重となるとライバルにさらわれかねない、日枝さんも気が気ではないはずだ」
背景には舛添氏と安倍氏のかねてからの不仲もあると見る関係者も多い。フジの悲願に暗雲が立ちこめている。
※週刊ポスト2014年9月12日号