テレビキャスターの鳥越俊太郎氏は、8月21~24日にオーストラリアで開催された水泳のパンパシフィック大会をテレビ観戦した時、“前奏付き”の君が代に強い違和感を持ったという。
君が代の前奏が論争になったのは、実は今回が初めてではない。2012年のロンドン五輪でも物議を醸していた。
今回と同じく、ロンドン五輪でも表彰式で前奏ありの君が代が流れていたため、「日本の国歌は冒頭が2回繰り返される曲だと世界に誤解されてしまう」との意見があがったのだ。
五輪の表彰式に観衆の国歌斉唱はなく、演奏のみが流れる。だからこそ、冒頭の一節が繰り返されると違和感が際立ったのかもしれない。ただし、過去の五輪表彰式に「前奏あり」の君が代が流されたことはない。
なぜロンドン五輪では前奏ありだったのか。JOC(日本オリンピック委員会)の広報担当者はこう説明する。
「五輪表彰式用としてJOCは前奏ありと前奏なしの2パターンのCDを五輪組織委員会に送り、『表彰式では前奏なしを流してください』とお願いしていました。前奏ありのCDは、大会期間中の文化交流イベントでの国歌斉唱用として使用するために送ったものです。2種類ある説明もしていました」
ところが、表彰式で流れたのは、まさかの「前奏あり」だった。
「組織委員会の手違いでした。訂正を求めましたが、『すでに編集済みで、途中からは変更できない』との返答でした。そのため、五輪期間中の表彰式ではずっと前奏ありの君が代が流れてしまいました」(同前)
この“失態”を受けてJOCは今年のソチ五輪開催前に提出テープを念入りにチェック。男子フィギュア金メダルの羽生結弦の表彰式では、前奏なしの君が代が流れた。
では、パンパシはなぜ「前奏あり」だったのか。日本水泳連盟に訊いた。
「今回演奏された国歌は連盟が送ったものではなく、組織委員会が現地で用意したものです。連盟が所有するものには前奏はありません」(日本水泳連盟広報)
※週刊ポスト2014年9月12日号