高齢化ニッポンの新たな重要テーマになっているのが「実家の片付け・処分」である。「どのように家財を処分すればいいのか」「業者に依頼する場合の注意点」といったノウハウが注目を集めるが、背景にある「老老相続」の深刻な現実を見落としてはならない。
実家の処分を検討する際、最も費用がかかるのは家屋の解体だ。
親が長年暮らした実家は老朽化が進んでいる。そのままでは賃貸にも出せず、売却もできないケースがほとんどだ。売却のためには家屋を解体して更地にする必要が出てくる。
『田舎の家のたたみ方』(メディアファクトリー新書)の著者で、経済ジャーナリストの三星雅人氏によれば、「ケースバイケースですが、解体費用は関東では床面積1坪あたり3万5000~5万円、関西では3万~4万5000円ほどが相場」という。
この料金の幅は家屋の構造によるところが大きい。
木造住宅の方が総じて低額で、鉄筋コンクリート造、鉄骨造は高額になる。さらに家屋の形状が複雑であれば、解体工法や所要時間(日数)が変わってくるため、解体費用や解体作業員の日当がかさむ。
また、住宅密集地帯の場合は重機が搬入できないケースもあり、その場合は作業員のみによる作業となるため費用は数割高くなる。加えて、近年の建設作業員不足によって人件費は上昇傾向にある。登記の書き換え(司法書士に支払う手数料含む)や立ち会いのための交通費などを合計すると400万円程度かかるケースも珍しくない。
家屋の解体に対し助成金が出る自治体もある。たとえば東京・足立区は解体費用の9割、最大100万円まで助成される。富山・射水市でも、解体費用の2分の1、最大50万円まで助成がある。制度の確認は必須である。
※週刊ポスト2014年9月12日号