国内

マックの全席禁煙「cafe戦略のブレで来店動機薄れる」と識者

全店・全席の禁煙化に不満の声も出るマクドナルド

 中国製鶏肉の品質問題に続き、商品代金の取り過ぎまで発覚して消費者の信頼を大きく失墜させてしまった日本マクドナルド。来店客数が直近14か月連続で前年比マイナスを続けていることは当サイトでも報じた通りだが、このまま加速する“客離れ”を食い止められなければ同社の業績回復は望めない。

 しかし、客数減にさらなる追い打ちをかけてしまいそうな懸念材料もある。8月1日から国内すべての店舗(3135店)で実施している「全席禁煙化」だ。

 これまで店内喫煙に関するマックのスタンスは、分煙化の推進だった。

<それぞれの店舗では、店舗をご利用されるお客様のニーズを踏まえて、禁煙や時間帯あるいは曜日によっての分煙を実施いたしております>(以前の同社HPより)

 喫煙スペースはタバコの煙が漏れないよう、天井から床まで四方を仕切った席を設ける店舗が多く、愛煙家のビジネスマンやシニア層の“憩いの場”となっていた側面もある。事実、こんな声が聞かれた。

「毎朝、散歩がてらにスポーツ新聞を買い、マックで一服しながらコーヒーを飲むのが定年後の日課になっていました。コーヒーの味も数年前のリニューアルで深みが増して気に入っていたのに……。7月に突如タバコが吸えなくなってからは、駅前のコーヒーチェーンに行っています」(千葉県在住・60代男性)

 同社は全席禁煙を決めた理由について、<お子様連れを含むすべてのお客様に、よりきれいな空気と健康に配慮した環境のなかでお食事をお楽しみいただけるよう配慮してまいります>とコメントしている。

 確かに今期の業績テコ入れ策として、キッズ・ファミリー客をターゲットに店舗改装や子供向けセットメニューの拡充を図ってきた同社にとって、全席禁煙はイメージ戦略上も必須だったのかもしれない。

 だが、急激な方針転換に疑問を投げかける向きもある。過去にハンバーガーチェーンの立ち上げにも関わった経験を持つフードコンサルタントの白根智彦氏はこんな見方をする。

「マックは4年前から禁煙化を進めてきたと説明していますが、この4年間はスターバックスをはじめとするコーヒーチェーンやコンビニコーヒーなどの台頭で『カフェブーム』が盛り上がっています。

 マックもご多分に漏れず“プレミアムコーヒー”や“マックカフェ”などデザートメニューを増やして客数アップのけん引役にしてきました。分煙対策を進めたのも、カフェ化の強化でリピーターを増やそうとしていたからです。

 それが、今になって急に全席禁煙を打ち出したのは、中国問題を受けて品質・環境問題をアピールする必要に迫られたのはミエミエ。あまりにもマーケティング戦略がブレ過ぎていると言わざるを得ません」(白根氏)

 マックはこれまで低価格商品を武器にあらゆる客層を呼び込んで高成長を続けてきた。苦境に喘ぐいま、禁煙化で自ら客層を絞ってしまえば、ますます他社との競争力も失いかねない。白根氏が続ける。

「バーガーチェーンではモスバーガーだって分煙スペースを残していますし、ファミレスのロイヤルホストも席は禁煙ですが店の入り口付近に喫煙部屋を設けている店舗があります。駅の構内ではタバコを吸う権利を得るためにコーヒー代を払って店に入る人も多いのが現状です。

 飲食店の分煙化は時代の流れです。喫煙・非喫煙者どちらも同じ顧客でしょう。売り上げ確保のためには、両者へ配慮するのは当然のことです。そんな中、マックはただでさえ客離れに歯止めがかからないうえに、少数派とはいえ喫煙客を排除してしまったら、それこそ来店動機は薄れる一方です」

 信頼回復を目指しているマクドナルドだが、サービススローガンでは“すべてをお客様のために”とうたっている。ならば、喫煙・非喫煙者の双方に配慮する手立てはなかったのだろうか。今回の全店での全席禁煙化はそのスローガンと矛盾してはいないだろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト