高齢化ニッポンの新たな重要テーマになっているのが「実家の片付け・処分」である。「どのように家財を処分すればいいのか」「業者に依頼する場合の注意点」といったノウハウが注目を集めるが、背景にある「老老相続」の深刻な現実を見落としてはならない。
遺品整理、解体にかかる金額、売却の可能性を考慮した際、多くの人が「空き家のままにしておく」という選択肢をとらざるを得ない。ただしその場合でもコストはかかってくる。
固定資産税は払い続けなければならないし、水道・電気・ガスの基本料金もかかる(合わせて月額約5000円)。『田舎の家のたたみ方』(メディアファクトリー新書)の著者で、経済ジャーナリストの三星雅人氏は、
「管理や掃除のことを考えると、電気と水道は残しておいた方がいい。忘れてはいけないのが庭の手入れです。ヤブ蚊や蜂の巣の発生で、近隣からクレームを受ける可能性もある」
という。庭の手入れを業者に頼んだ場合、庭師1人につき1日2万円が相場。季節ごとに呼ぶとすれば年間8万円だ。千葉県に住む60代の主婦は、一昨年亡くなった叔母の空き家を管理しているが、苦労は絶えない。
「空き家だと知れたら、ゴミの不法投棄をされたり、家の中に侵入されたりするんじゃないかと怖い。そのため夜になると自動で灯りがつくライトを設置しました。数万円の費用がかかったうえに電気代もバカになりませんが、万が一のためには仕方がない」
豪雪地帯ならではの出費もある。秋田県に実家のある東京在住の65歳男性がいう。
「冬は屋根の雪下ろしを定期的にしないと家が潰れてしまう。昨冬は雪が多かったので、ひと冬に5回も雪下ろしを依頼しました。作業員1人あたり2万円で、3人呼んだので1回6万円。ひと冬で30万円だからたまりません」
※週刊ポスト2014年9月12日号