ラブラドールレトリバーの盲導犬・オスカーが、何者かに右背中を刺されるという残酷な事件が発生したが、こうした動物虐待の実態は、統計からは見えづらい。
環境省が調べた「全国の犬・猫の殺処分数の推移」(2012年調べ)によると調査を開始した1979年の122万頭に比べて2012年は16万頭と、この30年で激減しており、一見すると、動物愛護の精神が日本で広く浸透したように見える。
だが、同じく環境省が調査した「動物の遺棄・虐待等調査報告書」(2009年調べ)によれば、2008年に動物虐待で警察の取り調べを受けた人間は52人で、これは20年前と比べると7倍に増えているのだ。
盲導犬・オリバーの飼い主Aさんの知人で、動物愛護団体のNPO法人『アニマルグリーンアップル』副理事の佐藤徳寿さんがこう語る。
「動物虐待というのは、発覚している件数の10倍はあると思います。
相手が人間の場合と違って、警察に相談しない人がたくさんいますから。仮に通報しても、警察は動物を保護する権限もなく、ほとんどの場合、飼い主への口頭注意で終わりなので、諦めてしまう人が多いんです。
ぼくの知るケースでいえば、例えば、群馬の愛護協会に保護されたビーグルは、“もういらねぇや”と飽きてしまった飼い主によって、すべての足を鉈で切り落とされた状態でした。人形感覚でチワワを買って、いざ飼ってみたら、よく吠えるし、おしっこやウンチをするので面倒だと、3日で保健所に連れて行く、なんてケースもあるんです」
保健所に保護された動物は、自治体によって差はあるが、3~7日後には殺処分されてしまう。
「欧米じゃ考えられません。アニマルシェルターの発達したドイツでは犬猫の殺処分はまずないですし、アメリカではアニマルポリスがいて、動物虐待があればすぐに逮捕されます。動物の命に向き合うということについて、日本はまだ圧倒的に遅れているんです」(前出・佐藤氏)
実際、日本では昨今、動物虐待事件が多発している。
今年7月には、長野県小谷村の男性が、捕らえた野良猫を檻に入れて川に沈める様子を動画投稿サイトで生中継し、県警に事情聴取される事態となっている。
また8月には、東京・大田区蒲田の公園で、口から泡を吹いて不審死していた猫が25匹も見つかっている。
※女性セブン2014年9月18日号