9月3日午後5時40分、東京・築地にある朝日新聞本社内ではこの日2度目となる臨時部長会が開かれた。
「『言論封殺』という言葉とともに報道されてしまった。ダメージを一刻も早く回復し、信頼を取り戻すことが最優先だ。池上氏のコラムは原文通りに掲載することにした」──席上での杉浦信之・編集担当執行役員の発言要旨である。
ジャーナリストの池上彰氏が朝日紙上で連載しているコラムで、従軍慰安婦をめぐる朝日の検証記事を批判する内容を執筆したところ、朝日側が掲載拒否。それに対して社の内外から批判が殺到し、朝日中枢が“白旗”を上げた瞬間だった。
同日13時に開かれた1度目の臨時部長会では各部長から「コラムは掲載すべきだ」と会社に対し猛反発の声が出ていた。さらにその日、〈はらわたが煮えくりかえる思い〉〈この(掲載拒否)判断は明らかに間違っています〉〈恥ずかしい〉などと朝日の記者がツイッター上で自社批判を実名で繰り返していた。
夕方の会議で各部長から発せられた質問は鋭かった。
「社の内外から記者会見するべきだという意見が出ている」
「今回のことでは考えていないが、検討する」
「どこが問題だったか説明しないのか」
「池上さんとのやりとりは公開しない。コラムを掲載するのに、会見を開くのは変だろう」
「いまの説明は週刊誌報道と違う」
「経緯やコメントは池上さんとすりあわせた上で、今回の掲載となった」
そして最後に杉浦氏と別の編集幹部がこう陳謝したという。
「社員のみなさんに、この会社で働くことに少しでも疑問を与えてしまったとしたら、お詫びしたい」
※週刊ポスト2014年9月19・26日号