9月3日に行なわれた内閣改造・自民党役員人事では、その背後に財務省の巨大な影が見える。財務省の悲願である消費税を10%に引き上げる体制が固まりつつあるのだ。谷垣禎一幹事長は就任会見で消費税を10%に予定通り上げることを強調した。
財務相経験者の谷垣氏は総裁時代に政調会長だった石破茂氏とともに2012年6月の消費税増税の自公民3党合意をまとめた当事者であり、二階俊博総務会長も消費税増税を推進した人物だ。副総理に留任した麻生太郎・財務相と並んで「財務省イエスマン」の増税四羽ガラスが自民党と内閣の中心に座った。
また、甘利明・経済再生相はこれまで消費税再引き上げについて、「慎重に総理が判断される」と優等生回答をしていたが、留任が内定するや、「ベストシナリオは予定通りに上げることだ」とまるで財務省の靴を舐めるような言い方に変わった。
財務省の操り糸はもっと小者の新閣僚にまで張り巡らされている。今回の改造では、当選回数で上回る先輩議員を飛び越してなんと3人もの財務副大臣経験者が大臣に抜擢された。消費税の生みの親で「大蔵族のドン」と呼ばれた竹下登・元首相の実弟、竹下亘・復興相と山口俊一・沖縄北方相、そして小渕優子・経産相だ
改造直前、新聞辞令で次々に大臣候補の名前が報じられると、安倍側近閣僚の1人は思わずこう漏らしたという。
「ウチにはこんなのしかいないのか」
名前の挙がった候補が消えていくなか、財務副大臣を経験した3人は最後まで残って大臣の座を射止めた。
安倍側近の高市早苗・新総務相も、入閣4日前、党政調会長として「基本的に予定通りに税率が上がり、その分、福祉や子育て支援が充実する形になるのが好ましい」と発言して増税容認の踏み絵を踏んでいる。
安倍晋三首相は財務省から、来年10月の消費増税実施に向けてがんじがらめにされたといっていい。
※週刊ポスト2014年9月19・26日号