延長50回、しめて709球。4日間に及んだ準決勝を1人で投げ抜き、全国高校軟式野球選手権で優勝した中京高(岐阜)の松井大河投手は、「大学では硬式にチャレンジして将来はプロに行けたら」と語った。
すでにプロ側も食指を伸ばしている。
「特に日本ハムは興味津々です。話題性のある選手を好む傾向があり、3年前のドラフトで早大ソフトボール部の大嶋匠を7位指名したり、やり投げ日本代表のディーン元気(ミズノ)の調査もしている。本気で指名にいく可能性は高い」(日ハム担当記者)
気になるのは実際にプロ入りした場合の可能性だ。
軟式から硬式への転向には課題も少なくない。試合に使われるA号軟球は直径71.5~72.5ミリ、重量134.2~137.8グラムに対し、プロ野球で使用する硬球は72.9~74.8ミリ、141.7~148.8グラムと一回り大きく重い。中が空洞のゴム製の軟球と、硬質ゴムを核にして糸で巻き、表面を革で縫い合わせた硬球とでは、感触も反発力も大きく異なっている。
ただ、過去に成功例はある。代表格が広島で通算148勝、138セーブの記録を残し、沢村賞(1988年)にも輝いた大野豊氏だ。
「僕は中学で軟式、高校で硬式、社会人でまた軟式をやってからプロ野球で硬式を経験してきました。硬式は体全体で投げるため軟式以上に肩や全身の強さが必要とされるが、テレビで見た限り、松井君のフォームはしっかりしているし、あれだけ投げたスタミナは実証済み。あとはいかにボールに慣れるかでしょう。アマとプロの違いはあったものの、僕の経験からいえば、軟式から硬式に変わるほうがハードルは低かった」
大野氏は社会人時代、硬球で高校生チームと対戦。「3年ぶりだったからコテンパンにされるかと思ったら、13奪三振。硬式でもイケると感じた」のがプロを目指すきっかけだった。
「同じ軟式をやっている選手の励みにもなるので、松井君にはぜひプロ入りを果たしてほしいですね」
※週刊ポスト2014年9月19・26日号