【マンガ紹介】『あそびあい(2)』新田章/講談社/607円
たった1人の愛する人としかセックスをしてはいけない。あるいは、それこそが幸せである。…果たして本当にそうでしょうか?
『あそびあい』の女子高校生・小谷さんは、同時に複数の男性とセックスする女の子です。年の離れたおじさんとも、派手なおにいさんとも、隣のクラスの名前も知らなかった男子とも、そして自分を大好きな男子・山下くんとも。
言い寄ってくる男性を断れないいわゆる都合のいい女というわけでも、悲しい事情があるわけでも(ちょっと貧乏ですが)ありません。「機会があれば誰だって楽しい事するでしょ」。それが彼女の理屈。
傷つくのは、いつも男性のほう。自分だけを愛してくれない(全員のことをそこそこ好きな)彼女にしびれを切らした男性が去って行っても彼女の感想は「悲しい」のではなく「もったいない」。一応恋人同士になった山下くんに浮気(?)現場に踏み込まれても悪びれることなく、浮気相手が出してくれたメロンに「わー山下 メロンだよ!」と大はしゃぎ。「オレはっ 好き同士でしてるって思ったときが1番気持ちよかったよ!」と正論を吐き、怒りに震える山下くんのほうが滑稽に見えてきます。
もし小谷さんが男だったなら、ここまで奇異な子としては描かれることはなかったはず。「女の性」に対して誰もが持つ先入観も浮かび上がります。小谷さんを嫌悪するか、痛快と感じるか、はたまたうらやましく思うのか。道徳観にゆさぶりをかけられる一冊です。
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2014年9月18日号