反日色を一段と強めながら、同時に中国に擦り寄る朴槿恵政権だが、安全保障の専門家である韓国陸軍元大佐の池萬元氏は、「反日親中は韓国の国益を損ねる愚行」と断言する。
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最初にお話ししておきたいのは、私はいわゆる親日派ではないということだ。歴史問題や慰安婦問題、独島(竹島)問題に対する日本の主張には同意できない。しかし、現在の韓日摩擦については韓国側にも批判的な視点を持つことが必要だと考える。
朴正熙政権以降、韓日は密接な友好関係を発展させ、2000年代には日本の韓流ブームをはじめ文化的交流も深まった。それを台無しにする朴槿恵政権の対日強硬姿勢には大きな問題がある。朴大統領は歴史認識や慰安婦問題に偏重し、経済連携や韓米日の実質的な軍事連帯の重要性を見失っているからだ。
7月に中国の習近平・国家主席が訪韓した際、朴大統領は中国と歩調を合わせ日本の集団的自衛権(の閣議決定)や歴史問題に懸念を示した。集団的自衛権を巡っては韓国内でも多くの批判があり、大統領の立場から懸念を示すのは当然と言えるが、それは韓国が単独ですべき対応だ。
中国と共に日本を批判するという政治的ゼスチャーは、国際社会において大きな誤解を招くことになる。近年、中国との経済的な関係が強まっているにせよ、安全保障問題では韓国と中国は対立関係にあるはずだからだ。この先、朝鮮半島あるいは中国で有事が勃発した場合、韓米日の軍事協調が不可欠であることは明白だ。
今や米国を追い抜く勢いの経済力を背景に軍事力を増強する中国は、東アジアのパワーバランスを大きく変えようとしている。韓国は米日と共により緊密な軍事関係を築く必要に迫られているが、韓国が中国に擦り寄っていると判断されれば韓米日の間接的な軍事同盟に亀裂が入ることになるだろう。
朴大統領は、中国と歩調を合わせることが韓国の安全保障を脅かすことをまったく理解しておらず、政治家としての能力とバランス感覚があまりに欠如していると言わざるを得ない。
国家が関係を築く上で外交に対するスタンスや主張が食い違うことは珍しくない。しかし、韓日には経済連携や軍事連帯で互いに協力しなければならない問題が山ほどある。
韓国社会に蔓延する反日ポピュリズムと、それに踊らされた日本軽視の外交政策がいかに国益を損なう愚行であるか。朴大統領も国民もよく考えるべきだ。
※SAPIO2014年10月号