芸歴30年を超える安達祐実(32才)。記憶に残る映画やドラマに多数出演する一方で、結婚、離婚を経て、8才になる長女を育てる母親でもある。そんな彼女が11月8日公開の映画『花宵道中』で初めてヌードに挑んだ。その胸に秘めた覚悟とは──。
9月上旬、どこか寂しく冷たい雨が降りしきるなか、黒と白のシックな和服に身を包んだ安達祐実は姿を現した。東京・台東区にある吉原神社。吉原遊郭の鎮守だった社で、彼女は悲恋を辿った遊女たちに思いを馳せた。
宮木あや子さんの『花宵道中』(新潮文庫刊)が映画化。その公開が11月8日に迫るなか、主演を務める安達は共演の淵上泰史(30才)と豊島圭介監督とともに同神社を訪れたのだ。
安達が演じたのは江戸・吉原の遊女、朝霧。劇中で安達は初めてオールヌードとなった。
「今までの安達祐実を、すべて壊す決意で臨みました」
そう語る彼女の顔は充足感に満ちていた。「天才子役」と騒がれ、一躍時の人となった主演ドラマ『家なき子』(日テレ系)から20年。映画に込めた想いと大人の女性、大人の女優へと脱皮したいと願いつつ葛藤した苦悩の日々を率直に語った。
「今回の映画はヌードシーンや濡れ場もあるけど、私も今年でもう33才。世間が持つ安達祐実のイメージと実際の私の間にいつもある、大きなギャップを埋められればと思って出演を決めました。
私を幼いころから見てくださっているかたたちが、いつまでもかわいく清楚であってほしい、と望んでいるのも知っています。以前はファンの皆さんが求めていることをしなければ愛されないと思っていた時代もありました。
でも一方で、女優としては尖った役も演じたい。子役時代のイメージに捉われないで私を見てもらうにはどうしたらいいかと、ずっとジレンマを抱えてきたんです」
ドラマ『家なき子』で「同情するなら金をくれ」の名セリフを発したのは12才の時。それから多くの役を演じたが、その強烈な“子役”のイメージを拭い去ることができずにいた。
2005年に結婚し、翌年に長女を出産。2009年には離婚も経験したが、大人の女としての喜びや悲しみ、苦しみを演技に滲ませることができなかったという。
「いちばん苦しかったのは16才~20代前半くらいかな。年相応に見てもらえない容姿が、ただコンプレックスでしかありませんでした。でも20代後半ごろから、容姿も含めて素の自分を認めてくれる人が少しずつ周囲に現れるようになりました。
そのおかげで少しずつ自分自身を好きになれるようになって、いつか『女優としての安達祐実』も、それまでの子役のイメージを払拭できればと思うようになったんです」
ありのままの自分を受け入れられるようになった安達のチャレンジ。それが昨年発表された写真集『私生活』(集英社刊)だった。きれいである必要はない。自然体の姿をそのまま表現したいと、ほぼ全カットをすっぴんで挑んだ。
「この写真集は一度世間に衝撃を与えて、今まであった安達祐実というイメージの壁をがらがらと壊すのが目的でした。写真ならではの力と、自分のエネルギーが合体すればいいなと思っていた。決して優等生的な写真集ではないから、嫌がる人もいる。でも、それが女優としての幅を広げることにもつながればいいな、と。結果的にこれが今回の映画『花宵道中』の遊女役への入り口になったとも思います。
花魁の役は初めてなので、オファーをいただいたときは嬉しかったです。人を愛する切なさと同時に素晴らしさも描いた物語だったので、たとえ濡れ場があったとしても今の私ならできるだろうって。
でも、1度目の本読み(※出演者が脚本を読み合わせること)をした時に、豊島監督から『上手すぎるから、むしろ下手にやってほしい』って言われてしまったんです」
※女性セブン2014年9月25日号