朝日新聞は8月5日と6日にかけて掲載した従軍慰安婦関連報道の検証記事において、一部虚報を認めた。そして8月11日に開かれた朝日新聞社の内定者イベントで、ある男子学生が慰安婦問題についてどう考えているかと講師の大阪本社編集局長に質問したところ、具体的な話はひとつも出ない肩すかしの返答に終わった。局長はこう語った。
「慰安婦に関して問い合わせが多いのは事実です。そのほとんどが批判です。でも、朝日はいつも批判されるんです。批判というより脅しめいたものもあります。皆さんそれに耐えられますか? それでも私たちは正しいものは正しいと常に言い続ける必要があるんです」
しかし、局長の言葉はまだ誠意があったというべきかもしれない。講義の後、司会の人事採用担当部長が付け加えた一言には、この新聞社にまだまだ反省が足りず、むしろ被害者意識すら持っていることがにじみ出ていた。
「慰安婦問題ですが、私にもたくさんの問い合わせが来ています。もちろん批判の声も。でも、大体その人たちは記事を読んでないんですよ。テレビ番組かなんかの批判を見ているだけで」
“朝日を批判する人は新聞を読んでいない”と斬って捨てる発言に、内定者のひとりは「耳を疑った」と振り返る。
株を上げたのは「勇気ある質問者」だ。
「この男子学生は海外のメディアでインターンをしていた経験があり、同期のホープと目されていた。本来なら黙っていたほうが無難なのに果敢に質問を浴びせたのは、ジャーナリズム志向が強いゆえでしょう。今回の件で会社からマークされないか心配です」(内定者のひとり)
社長メールとあわせて考えても、朝日はいまだ「我々を批判する者こそが悪」と捉える傾向がある。志ある若き記者の卵が不当な扱いを受けないことを願う。
※週刊ポスト2014年9月19・26日号