11月8日公開の映画『花宵道中』で、主役の遊女・朝霧を演じ、初めてヌードに挑戦した安達祐実(32才)。初めての花魁の役に対し「濡れ場があっても今の私ならできるだろう」と向かっていった安達だが、初めての本読みでは豊島圭介監督から「上手すぎるから、むしろ下手にやってほしい」と言われたという。女優として30年ものキャリアを持つ安達が思いも寄らなかった監督からの指示。しかし、そこには監督の深い意図があった。安達が語る。
「朝霧は幼いころから吉原で育ち、遊女になるのが当たり前でした。私ももの心ついた時には芸能界で演技をしていて、そのことに疑問を抱いたこともなければ、反発を覚えたこともなかった。
でも、朝霧が半次郎(淵上泰史)と出会って恋をして、自分の置かれた状況に葛藤して生きていくように、私も年をとってさまざまな経験をするにつれて、子役や女優である前に、ひとりの人間だと考えるようになっていきました。
もちろん仕事は違いますが、朝霧と私の人生は共通する部分が多かったんです。だから、監督は作り込んだ演技ではなく、素の私が見える演技を要求したんだと思います。
何も演技らしいことをせずに演じるという行為には勇気がいりました。でも、(豊島圭介)監督は『今まで見たことがある安達祐実なら、この映画を撮る意味がない』って。
今回それが実現できたことで私自身を朝霧の中に投影でき、遊女でありながら少女らしい部分も残る朝霧を演じることができたんです」
「躰に花を咲かせる遊女」として評判の遊女だった朝霧は壮絶な過去を抱え、いつも男性に心を閉ざしていた。しかし彼女は、半次郎との運命の出会いによって、初めて胸の高鳴りを覚える。
だが、ふたりを待ち受けていたのは苛酷な運命だった──。この映画で安達は実に3度の濡れ場を演じているが、いずれのシーンも朝霧の心情の変化が象徴的に描かれている。
「オファーをいただいた段階でヌードシーンがあることについても話はうかがっていました。多くのスタッフの前で裸になるわけですし、濡れ場はもちろん恥ずかしいという思いもありました。でも、しっかり繊細に撮ろうという雰囲気が現場には漂っていたので、すごくありがたかったですね。
朝霧のなかでは、男性に抱かれることはずっと商売として成立してきたわけです。でも好きな人ができたことで、肌を合わせる価値観そのものが変わっていく。それを3回の濡れ場で表現しようと、豊島監督とは話しました。
1度目は、完全に仕事として客を迎えます。2度目は、恋心を抱く半次郎の前で他の男性客に蹂躙される場面。そこで朝霧は、最初こそ恥を晒すのが嫌で見られたくないと思うけれど、次第に『私はこういう女として生きてきた。だからせめて目を背けないで自分の姿を見て』と願うようになるんです。
さらに最後の半次郎と求め合うシーンでは、初めて愛する男性に触れられた女性の喜びを表現しています。そこには、たとえ命を失ってもこの瞬間さえあればいいという一種の覚悟も滲んでいるんです」
※女性セブン2014年9月25日号