海外旅行へ行くとき、日本から目的地への直行便ではなく、少し時間はかかるがリーズナブルな乗り換え便を利用する人も多い。最近は中東のドバイやドーハなどが注目を浴びているが、実際にもっともよく利用されているのが韓国の仁川空港だろう。仁川空港で過ごしたいために、わざわざ仁川を経由する便を予約する人もいるほどだ。
「広々として明るくて、無料で横になれる場所もたくさんあって、狭苦しい成田や羽田よりずっと過ごしやすいですよ。免税店もすごく多いですし、日本語で買い物ができるからお客さんにも喜ばれます。今ではいろんな空港にありますが、仁川はアジアの主要空港でマッサージが受けられるようになった初めての空港だったと思います。成田は、足を伸ばして休める場所がほとんどないんですよね」(ツアー旅行添乗員)
いまや空港は、ただの待合所から楽しく過ごせるショッピングモールや遊園地のような存在になった。滑走路の増設が進まず基本機能以外の部分に配慮が行き届かなかった成田空港や羽田空港も、様々な取組みを始めている。成田空港では、畳でできたステージを特設し、日本の伝統芸能、琴などの演奏会を無料で催している。最近では、羽田空港の国際線ターミナルに日本橋を模したひのき造りのスロープを設置したと話題だ。
だが、空港のアトラクション化についても成田と羽田はかなり後れを取っていると言わざるをえない。空港リサーチコンサルティング会社スカイトラックスの空港格付けレビューをみると、成田も羽田も空港そのものの評価は低くない。しかし、内容を見ると清潔で掃除が行き届いている部分は評価が高いが、休息場所やレジャーについての評価が低い。
「仁川には韓国の伝統文化センターがあって、そこで工芸品の色つけや組紐編みなどが体験できます。自分から積極的に参加するタイプじゃなくても、免税店などがある広い通路を、かつての王族の衣装を着た人たちがパレードする様子が見られます。期間限定ではなく毎日です。韓国に入国せずに体験できるから、韓国旅行は一度もしたことがないけれど、楽しいからとわざわざ仁川経由便を選ぶお客さんもいます」(旅行代理店社員)
前出の羽田空港に完成した日本橋を模したひのき造りのスロープは、出国前エリアにある。同時にオープンした多目的ホールや根津豆腐工房、梅園などの和食が楽しめる商業施設も、日本に入国しないと楽しめない。入国しない人にも空港を存分に楽しんでもらおうという仁川と比べ、空港の活性化という意味では物足りない。