広島の土砂災害の甚大な被害は記憶に新しい。東日本大震災を目の当たりにした際には、「海の近くに住むのは避けよう」などと思った方も少なくなかっただろうが、今回の災害では通常の住宅地にも危険があるということがわかった。
災害に遭う危険な土地を見極めるには「地名や地図、そして家周辺の地形に注意を払うべき」と語るのは中央不動産鑑定所執行役員・不動産鑑定士の田島洋さんだ。
「被害に遭った広島県安佐北区、安佐南区は、1920年代の地図を見ると、『上楽地』『迫田』『竹植』といった文字があります。『上楽(じょうらく)』はもともとは『ジャラク』で、水が流れる様子を表す『蛇』だったと推測できます。『迫田(さこた)』の『サコ』は谷間や川で狭まったところという意味ですし、『竹(たけ)』は山地の地崩れ、崖などを指す『タキ』を意味すると考えられます」
そういった災害地名は全国に数多く存在し、災害地名は江戸時代の地震で災害率が普通の土地の約1.5倍だという研究結果もある。そして、家周辺の地形に注意を払うことについて田島さんはこう語る。
「例えば、住宅地の近くに長く整備された緑道がある場合、そこは昔、水路や川だった可能性が高いので地震によって液状化する可能性があります。また、水路の上をコンクリートなどで蓋をしている暗渠も注意が必要です」(田島さん)
土地の登記簿(登記事項証明書)にも隠れ災害の危険性を判断するヒントがある。
「土地登記簿の『地目』の欄にはもともとそこがどんな土地だったかが示されています。また、『所在』の欄には地名変更前の古い地名が記載されていることがあります。地目の種類は『宅地』『畑』『田』『池沼』『ため池』『山林』などがあって、古くから『宅地』だと概ね問題がないと考えられますが、『田』『池沼』などの場合は注意したほうがいい。
いずれも地盤が緩く地盤沈下などのリスクがある。傾斜地で『山林』だった場合は地滑りなどの危険の可能性があります。最近の電子化された登記簿だと、もともと『田』だった場所も現在の地目である『宅地』と記載されているケースがあるので、閉鎖登記簿といって昔の登記簿を見るのが確実です。登記簿は法務局で誰でも調べることができます」(田島さん)
※女性セブン2014年9月25日号