プロ野球は各チームとも残り試合が少なくなり、パ・リーグでは2008年以来Aクラス入りから遠ざかっていたオリックスがCS出場圏内で頑張っている。この“快進撃”をOBはどう見ているのか? オリックスの前身となる阪急で活躍した米田哲也氏は、今シーズンのオリックスをこう分析する。
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ハッキリいって寄せ集め集団。今年ここまで来られたのも、結局は戦力の補強があったからでしょう。こういうチームは土壇場になると非常に壊れやすい。だから今こそ森脇監督の力量が問われているのです。遠慮があるのか、まだまだ森脇カラーが出ていないことが最大の不安要素です。
参考にしてほしいのは阪急、近鉄の監督を歴任した西本幸雄さんです。オリックスはこれまで弱くて、負けて当たり前、選手も負けてもなんとも思わない環境だった。この辺りは昔の阪急によく似ています。それを常勝チームへと変えたのが西本監督だった。
西本監督はまず、それまでの監督のイメージを変えた。監督とはベンチにドーンと座って動かないものでしたが、西本さんは自分から汗をかいて動き、監督の考えを選手に直接伝えようとした。そうやって西本カラーが次第に浸透していったのです。
森脇監督もオリックスを常勝チームにするために、カラーを強く押し出してほしい。伝統のないチームが勝つためには、楽天の星野仙一監督がそうだったように、監督が勝つための執念を露わにし、チームを掌握していかなければならない。
首脳陣が選手におもねると、土壇場で勝ちきれなくなります。優勝争いの経験があれば分かるが、残り30試合を切ると、投手陣の場合はそれまでの成績が関係なくなる。何勝していようが、自分の登板中は絶対に点をやらないという強い気持ちを持てるかどうか、ただその一点にかかってくる。
今年の快進撃の原動力となった西勇輝が、ここ1か月は低迷しているのが象徴的です。西はスピードはないがコントロールがいいピッチャー。ところがその制球力が悪くなっている。過去の投球を自分の中で引きずっているのが不調の原因でしょう。
こういうピッチャーがいると、大詰めでの優勝争いは勝ち抜けません。その原因を取り除いてやるのが監督・コーチの役目です。選手に嫌われてでも、きちんと進言ができるかどうか。ここでも森脇監督の見極めや対処の仕方が問われることになる。ひとえに森脇監督の覚悟にかかっていると私は思います。
※週刊ポスト2014年9月19・26日号